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第二話「花は花でも彼女は毒花である」
04-7.信じたのは可憐な花か、毒花か
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* * *
「ライラック」
目の前の出来事が夢だったのならばよかった。
俺が近くにいたことに気付いたライラックの眼は見開かれていた。
「ルイス先輩と付き合っているなら、教えてくれてもよかったのに」
わかっている。これは夢なんかじゃない。
「そしたら、こんなの、見なくてもよかったのにさ」
情けない自分が嫌になる。
今は泣くところじゃないとわかっているのに、大声で泣き出してしまいたい。
「……見ていたの?」
「偶然、通りがかったんだよ」
「声を掛けてくれたらよかったのに」
「声を掛けられるような雰囲気じゃなかっただろ」
いっそのこと、見下したように笑ってくれたらいいのに。
「え? どうして? あたしは別に良かったよ?」
ライラックはなにも考えていないのか。
俺がどんな思いをしているのか、本当は興味がなかっただけなのか。
「ねえ、ジェイド。あたしはルイスのことも、ジェイドのことも大好きよ。大好きな人に遠慮をされたくないわ」
少し前までは言われる度に舞い上がっていた言葉だ。
それなのに寒気がした。気持ちが悪いとすら思ってしまう。
「あたし、ルイスとジェイドが傍にいてくれたら、幸せなの。大好きな二人と一緒にいたら、あたし、どんなことでもがんばるかも!」
悪気はないのだろう。
わかってしまうのが辛かった。
「……幸せ?」
「そうだよぉ。大好きな人と一緒にいると幸せになるでしょ?」
「あぁ、そう、俺の考える幸せとライラックの言う幸せは違うんだな」
「えぇ? そんなことないよぉ」
「違うよ、違う。一緒じゃないんだ」
「えぇ? もう、どうしちゃったの? あっ! わかったぁ、もう、ジェイドったら寂しかったんでしょー? そうならそう言ってよね! あたし、急にどうしたんだろうって心配になっちゃった!」
ライラックの笑顔が好きだった。
今はその笑顔のどこに本音があるのか疑ってしまう。
「ライラック」
目の前の出来事が夢だったのならばよかった。
俺が近くにいたことに気付いたライラックの眼は見開かれていた。
「ルイス先輩と付き合っているなら、教えてくれてもよかったのに」
わかっている。これは夢なんかじゃない。
「そしたら、こんなの、見なくてもよかったのにさ」
情けない自分が嫌になる。
今は泣くところじゃないとわかっているのに、大声で泣き出してしまいたい。
「……見ていたの?」
「偶然、通りがかったんだよ」
「声を掛けてくれたらよかったのに」
「声を掛けられるような雰囲気じゃなかっただろ」
いっそのこと、見下したように笑ってくれたらいいのに。
「え? どうして? あたしは別に良かったよ?」
ライラックはなにも考えていないのか。
俺がどんな思いをしているのか、本当は興味がなかっただけなのか。
「ねえ、ジェイド。あたしはルイスのことも、ジェイドのことも大好きよ。大好きな人に遠慮をされたくないわ」
少し前までは言われる度に舞い上がっていた言葉だ。
それなのに寒気がした。気持ちが悪いとすら思ってしまう。
「あたし、ルイスとジェイドが傍にいてくれたら、幸せなの。大好きな二人と一緒にいたら、あたし、どんなことでもがんばるかも!」
悪気はないのだろう。
わかってしまうのが辛かった。
「……幸せ?」
「そうだよぉ。大好きな人と一緒にいると幸せになるでしょ?」
「あぁ、そう、俺の考える幸せとライラックの言う幸せは違うんだな」
「えぇ? そんなことないよぉ」
「違うよ、違う。一緒じゃないんだ」
「えぇ? もう、どうしちゃったの? あっ! わかったぁ、もう、ジェイドったら寂しかったんでしょー? そうならそう言ってよね! あたし、急にどうしたんだろうって心配になっちゃった!」
ライラックの笑顔が好きだった。
今はその笑顔のどこに本音があるのか疑ってしまう。
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