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第二話「花は花でも彼女は毒花である」

04-3.信じたのは可憐な花か、毒花か

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「お願い、あたしの名前を呼んでよ」

 これは夢じゃない。苦しいだけの現実よ。

 だからこそ、ヒロインを演じるの。

「ライラック。貴女は寂しい女性ですね」

「……そうかなぁ? あたしは寂しくないわ! だって、あたしにはルイスがいるもん!」

 媚を売って、権力者に気に入られる。

 それ以外の生き抜く方法は誰も教えてくれなかった。

「ねえ、どうして、好きな人に大好きって言ってはいけないの?」

 腕を絡ませて、少し、胸を当てる。

 それだけなのに真っ赤になっちゃってバカな男。

「ねぇ、ルイス。あたし、ルイスのことが大好きよ」

 上目遣いをすれば完璧ね。

 これで落ちない男はいないのは実証済みよ。

「ねぇ、ルイス。どうしたの? 顔が赤いわ。熱があるの?」

「あっ、貴女のせいでしょう!?」

「あたしが悪いの?」

「あ、いや、悪いとか、そういうわけではなくて、その、ですね」

「えへへ、変なの」

 乙女ゲームの時は、これでイベント発生だったのに。

 どこかで間違えたのかなぁ。選択肢が見えないって辛いわ。

「ルイス」

 これはゲームじゃない。

 だから、イベントが発生しないなら起こせばいいの。

「あたしを愛してくれる?」

「貴女が望むのならば愛も忠誠も捧げましょう」

「えへへ、嬉しいわ」

 簡単に惚れるバカな男。

 でもいいわ。あたしは心が広いから受け入れてあげる。

「大好きよ、ルイス」

 あたしだけを見ていればいいの。

 ヒロインが愛されるのはゲームも現実も変わらないわ。

「……私も貴方が好きですよ、ライラック」

 イベントだって思いのままになる。

 キスをするルイスの顔を保管しておけないのは難点よね。スチルを集めるのも好きだったのに残念だわ。
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