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第二話「花は花でも彼女は毒花である」
02-5.姉弟喧嘩の先にあるものは理想か、現実か
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「ジェイドに選択肢をあげよう」
冷や汗が止まらなくなっているジェイドは眼を見開いていた。
私が拳銃を持っていると知った途端、怯え始めるようではお父様の期待に応えられるようになる日は遠いだろう。
「大人しく降参をしてお茶会に参加をするか、このまま姉弟喧嘩をするか。どちらか好きな方を選ぶといいよ。それ以外の選択肢は認めないけどね」
選択肢はないようなものだ。
どちらを選んでもジェイドは納得しないだろう。
「【風よ、巻き上げ――】」
詠唱を始めたのと同時に発砲音が響く。
ジェイドの頬をかすめたからだろうか。そのまま座り込んでしまった。
「詠唱をしたということは喧嘩をするのだね? いいだろう、久しぶりの姉弟喧嘩だ。その度胸に免じて手加減をしてあげる」
情けなく座り込んだジェイドの右手にある杖を踏みつける。
椅子に座ったままだ。立ち上がる必要もない。
「その前に訂正をしなければいけないね。風の中級魔法の呪文は【風よ、吹け。全てを巻き上げろ】だよ。中級魔法の呪文すらも正確に覚えていないのならば、使おうとするのは早すぎるのでは?」
杖を蹴り飛ばし、ジェイドの右手をそのまま踏みつける。
「痛いッ!!」
「そうだろうね。痛いようにしているのだから当たり前だろう?」
「って、うわっ!? 姉さん、危ない!!」
「やればできるじゃないか。でも、油断はいけないよ」
右足を思いっきり振るう。
そのついでにジェイドの手を踏みつけている左足に体重をかければ、可哀想なくらいに悲鳴が上がった。
「ねえ、ジェイド。まだ五発残っているんだけど、試し打ちをしてもいい?」
「え、え、え、むっ、無理っ、無理! 姉さん、や、やめてっ」
「どうして? 喧嘩を売ってきたのはジェイドだよ?」
「無理無理! 死んじゃうから!」
「死ぬ覚悟だって出来ているだろう?」
「そんな覚悟なんて出来ていないよ!」
「そう。覚悟もないのに喧嘩を売るなんてどうしようもない子だね」
少しだけ屈んで笑いかける。
それだけなのにジェイドは涙目になっている。
冷や汗が止まらなくなっているジェイドは眼を見開いていた。
私が拳銃を持っていると知った途端、怯え始めるようではお父様の期待に応えられるようになる日は遠いだろう。
「大人しく降参をしてお茶会に参加をするか、このまま姉弟喧嘩をするか。どちらか好きな方を選ぶといいよ。それ以外の選択肢は認めないけどね」
選択肢はないようなものだ。
どちらを選んでもジェイドは納得しないだろう。
「【風よ、巻き上げ――】」
詠唱を始めたのと同時に発砲音が響く。
ジェイドの頬をかすめたからだろうか。そのまま座り込んでしまった。
「詠唱をしたということは喧嘩をするのだね? いいだろう、久しぶりの姉弟喧嘩だ。その度胸に免じて手加減をしてあげる」
情けなく座り込んだジェイドの右手にある杖を踏みつける。
椅子に座ったままだ。立ち上がる必要もない。
「その前に訂正をしなければいけないね。風の中級魔法の呪文は【風よ、吹け。全てを巻き上げろ】だよ。中級魔法の呪文すらも正確に覚えていないのならば、使おうとするのは早すぎるのでは?」
杖を蹴り飛ばし、ジェイドの右手をそのまま踏みつける。
「痛いッ!!」
「そうだろうね。痛いようにしているのだから当たり前だろう?」
「って、うわっ!? 姉さん、危ない!!」
「やればできるじゃないか。でも、油断はいけないよ」
右足を思いっきり振るう。
そのついでにジェイドの手を踏みつけている左足に体重をかければ、可哀想なくらいに悲鳴が上がった。
「ねえ、ジェイド。まだ五発残っているんだけど、試し打ちをしてもいい?」
「え、え、え、むっ、無理っ、無理! 姉さん、や、やめてっ」
「どうして? 喧嘩を売ってきたのはジェイドだよ?」
「無理無理! 死んじゃうから!」
「死ぬ覚悟だって出来ているだろう?」
「そんな覚悟なんて出来ていないよ!」
「そう。覚悟もないのに喧嘩を売るなんてどうしようもない子だね」
少しだけ屈んで笑いかける。
それだけなのにジェイドは涙目になっている。
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