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第二話「花は花でも彼女は毒花である」

02-4.姉弟喧嘩の先にあるものは理想か、現実か

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「泣かせた?」

 あれは泣かせたのに含まれるのだろうか。

 同情を買う為に演技をしていたようにしか見えなかった。

「被害妄想というものだね。私は初対面の少女を泣かせるような趣味はないよ」

「初対面だって? それが本当なら、姉さんは会ったこともなかった彼女の悪い噂を流していたことになるんだけど。姉さんがそんなことをする人なんて思いもしなかった!」

「噂を流すような面倒なことをするわけがないだろう。それもわからないのかい?」

「ごまかさないでくれよ!」

 聞く耳を持たないとはこういうことなのだろう。

 話せばわかり合えると思っていたのは、甘すぎたようだ。

「どうして、そこまでしてライラックに意地悪をするんだよ!?」

 意地悪をした覚えはない。

 泣き言を吐きたいのも彼女ではなく、私の立場の方だろう。

 私が泣かないのは手を出された婚約者に対して無関心だったからだ。

「話をするつもりはあるかい?」

 ジェイドに銃口を向ける。

 いざとなれば引き金を引かなければならないだろう。

「魔法だけに頼っていてはいけないよ、ジェイド。誇り高き魔法使いとはいえ、剣や銃には敵わない時がある。後方支援に特化した魔法使いというのは、今の時代、生き抜いてはいけないのだと教えられてきただろう?」

 至近距離で引き金を引けば、ジェイドの命を奪うことになるだろう。

 ルーシーは私の正当防衛を主張するだろう。そして辺境伯爵家の当主候補であるというだけでその主張は認められることになる。

「そ、そんなの、どこで手に入れたんだよ!?」

「お母様からの素敵な贈り物だよ」

「物騒なものを向けないでくれよ! 姉さん、俺がそういうことが嫌いなのを知っているだろ!?」

「よく知っているよ。でも、ジェイドが杖を向けるのだから仕方がないだろう?」

「俺は杖で、姉さんは拳銃だ! そんなの勝ち目がないじゃないか!」

「杖同士ならば勝てるとでも思っていたのかい? 数か月、見ない間に随分と立派な考えをするようになったじゃないか。その成果をみせてほしいものだね」

 ここで杖を投げて逃げようとしないのは成長した証だ。

 入学をする前のジェイドならば泣いて逃げたことだろう。
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