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第二話「花は花でも彼女は毒花である」

02-2.姉弟喧嘩の先にあるものは理想か、現実か

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「我慢? ……お父様がお怒りになっている件ならば私は介入しないと手紙で伝えた筈だが。そればかりは自分で解決しなければいけないよ」

「そうじゃない!」

 姿勢を立て直したジェイドは私の元に駆け寄ってくる。

 いつもの穏やかな顔じゃない。

 ここまでジェイドが苛立っているのは初めて見た。

「姉さん!」

「なに?」

「ライラックのことを苛めるのを止めてくれないかな!? 彼女は姉さんが流した悪い噂で傷ついているんだ!」

 は? なにを言っているんだ。

 ジェイドは真剣な顔をしていた。

 けれども、言っている言葉は見当違いのものだった。

「なにを言って――」

「ごまかさないで。俺は真面目に話をしているんだ」

 呆れた妄想は真面目な話に含まれるとは知らなかった。

 ジェイドの手には杖が握られていることに気付く。いざとなったら魔法を使う覚悟の上で私を訪ねたのだろうか。

「ライラックが泣いていた。どうしたらいいのか、わからないって、泣いていたんだ。姉さんにはわからないだろうね? 誰もが姉さんみたいに強い人じゃない。ライラックは守ってあげなくてはいけないか弱い女の子なんだ」

 か弱い女の子?

 それはアレクシスを誘惑し、ジェイドを意のままに動かすような人物のことを示す言葉ではないだろう。

「それなら、俺は、なんだってする」

 ライラックは弟をそこまで追い詰めたのか。

 チェスの駒のように弟のことを扱っているのは知っていた。

「姉さん。ライラックに謝って」

 実際に目にしたわけではなかった。

 だから、ジェイドが彼女を選ぶというのならば応援をするつもりだった。

「……それを私に向ける意味を理解しているのだろうね」

 杖を向けられた。脅迫のようなものだ。

 なにより、身内に対してそれをする意味を知らない子ではないはずだ。

「わかっているよ。でも、俺はライラックの騎士なんだ。騎士は守る為にいるべきものだろ?」

「騎士は平等ではなくてはならないよ」

「騎士は悪を裁く為にいるんだよ」
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