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第一話「悪は咲き誇る」

02-6.理不尽な扱いには慣れている

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「庶子である第二王子に王位継承権を与えるのはもったいないと言い始めてだな。それは、目も当てられない状況だったんだが……」

 国王陛下は思い付きの政策も多い。

 毎回のようにその政策は外れることがない為、国民たちから崇められているが、国王陛下と対面することが許されるお父様たちにとっては堪ったものではないだろう。

「王女たちよりも、庶子である第二王子の方が王位継承権が高いことが気に入らなかったのだろう。陛下の言葉に王妃も同調していてな、もはや、第二王子の王位継承権を取り上げるのは最重要任務となってしまったのだよ」

 それならば、納得はできる。

 婚約を解消するのではなく、破棄を企むように言っていたのは彼から全てを取り上げる為に必要なことだからなのだろう。

「他ならない国王陛下の意志だ。我々はそれに従う義務がある」

 同情はできない。

 国王陛下のご意向に逆らうわけにはいかない。

「婚約を破棄させるのは簡単だろう?」

「彼のお気に入りの恋人を利用すれば、明日にでも婚約の破棄を申し出て来ると思いますよ」

「そうだろうな、それが手っ取り早い方法だ。だが、それは最終手段に取っておけ」

「なぜですか。急を要するのでは?」

「そこは国王陛下も融通を利かせてくださった。お前が卒業するまでの期限を与えてくださったんだ、その間に破棄させればいい」

 お父様は今が二月であることを忘れてしまったのだろうか。

 魔法学校の入学は九月で統一されている為、卒業式は七月に行われる。私もアレクシスも最高学年である為、今年の七月で卒業をするのだ。

「五か月の間になにをしろとおっしゃるつもりで?」

 お父様がなにもせずに大人しくしていろと言うはずがない。

 破棄をさせるのは卒業の時か、そうではなくとも、大規模な行事の時に大事を引き起こせば国王陛下の介入があっても誰も違和感を抱かないだろう。

 計画されたものだと知ることもなく、アレクシスは罠にかかるだろう。

「ライラック・ロベリアという子爵令嬢を知っているか?」

 聞いたことがない名前だった。

 似たような名前……、いや、ライラックならば愛称がライラでもおかしいことではない。
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