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第二話「呪われた動画配信者」
01-35.
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それなのに、なぜか、足が止まらない。
「扉を開けたら終わりだ」
太一の声が震える。
「マッキー」
先頭を歩く正樹に迷いはなかった。
太一の呼びかけに応じることはなく、その手にはドアノブが握られていた。
「やばいんじゃないか? それ、開けたら帰れなくなる気がするんだ」
太一の言葉が気になったのだろうか。
正樹はゆっくりと振り返った。
その顔はいつもと変わらない。
動画配信者として面白さを追求することを考え、毎回のように失敗して、それでも次こそは成功すると疑わない正樹らしい顔だ。
「帰れない?」
正樹はドアノブを掴み、扉を開ける。
「バカを言うなよ」
迷いはなかった。
扉は開けられ、その奥は薄暗い部屋が広がる。壁には爪で引っ掻いたような血痕が残り、床は泥だけだ。
先ほどまで誰かがいたのだろう。
机の上には飲みかけのコーヒーがある。
まだ湯気が立っているコーヒー、側には食べかけのケーキが置かれている。
「……写真?」
太一は恐る恐る部屋に入り、壁に飾られている古びた写真立てを掴む。
年数が経っているのだろう。
写真立てに飾られているのはボロボロの白黒写真だ。
笑顔の少年だ。
見慣れた顔をしている。
太一はその顔に心当たりがあった。
「これって、マッキーだよな?」
「俺の写真だな」
「わざわざ仕掛け用に作ったのか?」
「いいや。そんなことはしない」
正樹は淡々と返事をしながら、壁にかけられたままの古びたカメラを手に取る。
「太ちゃん」
正樹に呼ばれ、太一は写真立てを元の場所に戻してから正樹に視線を向けた。
「扉を開けたら終わりだ」
太一の声が震える。
「マッキー」
先頭を歩く正樹に迷いはなかった。
太一の呼びかけに応じることはなく、その手にはドアノブが握られていた。
「やばいんじゃないか? それ、開けたら帰れなくなる気がするんだ」
太一の言葉が気になったのだろうか。
正樹はゆっくりと振り返った。
その顔はいつもと変わらない。
動画配信者として面白さを追求することを考え、毎回のように失敗して、それでも次こそは成功すると疑わない正樹らしい顔だ。
「帰れない?」
正樹はドアノブを掴み、扉を開ける。
「バカを言うなよ」
迷いはなかった。
扉は開けられ、その奥は薄暗い部屋が広がる。壁には爪で引っ掻いたような血痕が残り、床は泥だけだ。
先ほどまで誰かがいたのだろう。
机の上には飲みかけのコーヒーがある。
まだ湯気が立っているコーヒー、側には食べかけのケーキが置かれている。
「……写真?」
太一は恐る恐る部屋に入り、壁に飾られている古びた写真立てを掴む。
年数が経っているのだろう。
写真立てに飾られているのはボロボロの白黒写真だ。
笑顔の少年だ。
見慣れた顔をしている。
太一はその顔に心当たりがあった。
「これって、マッキーだよな?」
「俺の写真だな」
「わざわざ仕掛け用に作ったのか?」
「いいや。そんなことはしない」
正樹は淡々と返事をしながら、壁にかけられたままの古びたカメラを手に取る。
「太ちゃん」
正樹に呼ばれ、太一は写真立てを元の場所に戻してから正樹に視線を向けた。
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