動画配信者が消えた

佐倉海斗

文字の大きさ
上 下
40 / 41
第二話「呪われた動画配信者」

01-35.

しおりを挟む
 それなのに、なぜか、足が止まらない。

「扉を開けたら終わりだ」

 太一の声が震える。

「マッキー」

 先頭を歩く正樹に迷いはなかった。

 太一の呼びかけに応じることはなく、その手にはドアノブが握られていた。

「やばいんじゃないか? それ、開けたら帰れなくなる気がするんだ」

 太一の言葉が気になったのだろうか。

 正樹はゆっくりと振り返った。

 その顔はいつもと変わらない。

 動画配信者として面白さを追求することを考え、毎回のように失敗して、それでも次こそは成功すると疑わない正樹らしい顔だ。

「帰れない?」

 正樹はドアノブを掴み、扉を開ける。

「バカを言うなよ」

 迷いはなかった。

 扉は開けられ、その奥は薄暗い部屋が広がる。壁には爪で引っ掻いたような血痕が残り、床は泥だけだ。

 先ほどまで誰かがいたのだろう。

 机の上には飲みかけのコーヒーがある。

 まだ湯気が立っているコーヒー、側には食べかけのケーキが置かれている。

「……写真?」

 太一は恐る恐る部屋に入り、壁に飾られている古びた写真立てを掴む。

 年数が経っているのだろう。

 写真立てに飾られているのはボロボロの白黒写真だ。

 笑顔の少年だ。

 見慣れた顔をしている。

 太一はその顔に心当たりがあった。

「これって、マッキーだよな?」

「俺の写真だな」

「わざわざ仕掛け用に作ったのか?」

「いいや。そんなことはしない」

 正樹は淡々と返事をしながら、壁にかけられたままの古びたカメラを手に取る。

「太ちゃん」

 正樹に呼ばれ、太一は写真立てを元の場所に戻してから正樹に視線を向けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

視える棺2 ── もう一つの扉

中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、"視えてしまった"者たちの記録である。 影がずれる。 自分ではない"もう一人"が存在する。 そして、見つけたはずのない"棺"が、自分の名前を刻んで待っている——。 前作 『視える棺』 では、「この世に留まるべきではない存在」を視てしまった者たちの恐怖が描かれた。 だが、"視える者"は、それだけでは終わらない。 "棺"に閉じ込められるべきだった者たちは、まだ完全に封じられてはいなかった。 彼らは、"もう一つの扉"を探している。 影を踏んだ者、"13階"に足を踏み入れた者、消えた友人の遺書を見つけた者—— すべての怪異は、"どこかへ繋がる"ために存在していた。 そして、最後の話 『視える棺──最後の欠片』 では、ついに"棺"の正体が明かされる。 "視える棺"とは何だったのか? 視えてしまった者の運命とは? この物語を読んだあなたも、すでに"視えている"のかもしれない——。

心霊体験の話・土手の下

恐怖太郎
ホラー
これは私の知り合い霊子(仮名)から聞いた話です。 昔から霊が見えるという霊子です。 本当かどうかは私にはわかりません。 ------------- この投稿は、200話以上アップしてあるブログ「霊子の日記」からの抜粋です。 https://reinoburogu.hatenablog.com/ YouTubeにも「霊子さんの心霊体験」として投稿しています。 https://www.youtube.com/@kyoufutarou

りんこにあったちょっと怖い話☆

更科りんこ
ホラー
【おいしいスイーツ☆ときどきホラー】 ゆるゆる日常系ホラー小説☆彡 田舎の女子高生りんこと、友だちのれいちゃんが経験する、怖いような怖くないような、ちょっと怖いお話です。 あま~い日常の中に潜むピリリと怖い物語。 おいしいお茶とお菓子をいただきながら、のんびりとお楽しみください。

ヴァルプルギスの夜~ライター月島楓の事件簿

加来 史吾兎
ホラー
 K県華月町(かげつちょう)の外れで、白装束を着させられた女子高生の首吊り死体が発見された。  フリーライターの月島楓(つきしまかえで)は、ひょんなことからこの事件の取材を任され、華月町出身で大手出版社の編集者である小野瀬崇彦(おのせたかひこ)と共に、山奥にある華月町へ向かう。  華月町には魔女を信仰するという宗教団体《サバト》の本拠地があり、事件への関与が噂されていたが警察の捜査は難航していた。  そんな矢先、華月町にまつわる伝承を調べていた女子大生が行方不明になってしまう。  そして魔の手は楓の身にも迫っていた──。  果たして楓と小野瀬は小さな町で巻き起こる事件の真相に辿り着くことができるのだろうか。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分からないと怖い百物語

悪夢
ホラー
1話20秒で読めるような話を投稿していきます、解説、ヒント付きです

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

処理中です...