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第二話「呪われた動画配信者」
01-31.
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音は止まない。
言葉の通じない苛立ちを訴えるかのように徐々に音は大きくなっていく。
「え? ちょっと、待ってくれよ」
正樹は何度も瞬きをした。
何度見ても変わらない。
外壁を叩いている人影はなく、正樹たち以外の人がこの場所にいるわけでもない。
「また書かれる! 書かれてるけど! でも、俺たちの仕掛けじゃないからな!」
SNSで書かれている言葉に反応しつつ、正樹は恐る恐る音がする壁に近づいた。
それから足元に転がっている美加には目もくれることもなく、壁の目の前で止まる。
「今から! この音が鳴る壁に触れてみようと思います!!」
元気よく言い切った。
それに対する反応を伺うこともなく、正樹は音が鳴る外壁に触れる。
生暖かい液体が手に触れた。乾いていない液体の感触を味わうことになった正樹の顔は気持ち悪いと言いたげなものだった。
その表情を隠すこともなく、正樹は振り返った。
「生暖かい壁です」
なぜか、丁寧語になってしまう。
「まるで生きているみたいで、汗をかいている」
正樹が触れたのは汗ではない。
足元に転がっている美加の血だ。
「これ! きもいよな!?」
壁から手を離し、血まみれになった手をカメラに見せつける。正樹は手が真っ赤に染まっていることに気付いていない。
「血が……」
太一は気が遠くなりそうな顔色だった。
消えそうな声で呟いたのだが、正樹にも聞こえたようだ。正樹は反射的に自分の掌を眺め、心底嫌そうな顔をした。
「うわ」
ズボンで手を拭う。
固まってはいないものの、血を全て拭うことは出来なかった。
「まじかよ。ここは血文字で脅迫文が書かれている場面だろ!」
正樹はそう言いながら、壁から離れた。
いつの間にか壁を叩く音は止んでいた。
言葉の通じない苛立ちを訴えるかのように徐々に音は大きくなっていく。
「え? ちょっと、待ってくれよ」
正樹は何度も瞬きをした。
何度見ても変わらない。
外壁を叩いている人影はなく、正樹たち以外の人がこの場所にいるわけでもない。
「また書かれる! 書かれてるけど! でも、俺たちの仕掛けじゃないからな!」
SNSで書かれている言葉に反応しつつ、正樹は恐る恐る音がする壁に近づいた。
それから足元に転がっている美加には目もくれることもなく、壁の目の前で止まる。
「今から! この音が鳴る壁に触れてみようと思います!!」
元気よく言い切った。
それに対する反応を伺うこともなく、正樹は音が鳴る外壁に触れる。
生暖かい液体が手に触れた。乾いていない液体の感触を味わうことになった正樹の顔は気持ち悪いと言いたげなものだった。
その表情を隠すこともなく、正樹は振り返った。
「生暖かい壁です」
なぜか、丁寧語になってしまう。
「まるで生きているみたいで、汗をかいている」
正樹が触れたのは汗ではない。
足元に転がっている美加の血だ。
「これ! きもいよな!?」
壁から手を離し、血まみれになった手をカメラに見せつける。正樹は手が真っ赤に染まっていることに気付いていない。
「血が……」
太一は気が遠くなりそうな顔色だった。
消えそうな声で呟いたのだが、正樹にも聞こえたようだ。正樹は反射的に自分の掌を眺め、心底嫌そうな顔をした。
「うわ」
ズボンで手を拭う。
固まってはいないものの、血を全て拭うことは出来なかった。
「まじかよ。ここは血文字で脅迫文が書かれている場面だろ!」
正樹はそう言いながら、壁から離れた。
いつの間にか壁を叩く音は止んでいた。
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