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第二話「呪われた動画配信者」
01-30.
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「ここでコメントを読み上げていくからな!」
正樹は太一が持つカメラに視線を向けた。
「どんどん『#まあた』で投稿をしてくれ。気になったものがあったら、生配信で読み上げていくんで!」
正樹の言葉に対し、太一は何も言わなかった。
発言をしても聞き入れてはくれないと諦めたのか。壊れた玩具に飽きたかのように地面に放り出された美加から目が離せなくなっただけのか。
どちらにしても、正樹の暴走を止めようとする人はいなかった。
「ええっと。……『え? 本物? 本物だったらやばいよね』。いや、この手の感想多すぎない? 軽くしか目を通せていないけど、五回に一回はそういった内容なんだけど!」
正樹は笑顔だった。
本物なのか。作り物なのか。動画を配信している正樹たちの行動を疑う内容の書き込みが多くみられ、そのほとんどは批判的なものだった。
正樹は批判的な内容に触れない。
見なかったことにして、さらに話題になりそうなことを探す。
「本物。本物。超有名な心霊スポットに来ているんで! この廃村とか墓場とか! どう考えたって素人が用意できるものじゃないでしょ!」
合いの手は入らない。
今にも倒れそうな顔色をしている太一の視線は正樹に向けられておらず、ただ、カメラだけでは正樹に向け続けていた。
「『マッキー、おかしくなってる』。は? え? なんで?」
正樹は自覚がない。
SNSに書かれている言葉を読み上げながら、信じられないと言わんばかりの顔をしてみせた。
「俺はおかしくなんかないぞー!」
いつもならば彰が正樹の発言にツッコミを入れたところだった。
定番の返しもなければ、太一の小さな笑い声もない。
蘭の呆れたようなため息もなく、美加の煽るような言葉もない。
「そうだろ!? あーくん!」
正樹は当然のように彰の名を呼んだ。
まるで正樹の声に応えるかのようだった。
美加が倒れている近くから外壁を叩くかのような音がし始めた。
その音を聞き、正樹は外壁に視線を向けるものの、そこには美加が倒れているだけだ。
古びた外壁には血痕が残されており、誰も叩いていない。
正樹は太一が持つカメラに視線を向けた。
「どんどん『#まあた』で投稿をしてくれ。気になったものがあったら、生配信で読み上げていくんで!」
正樹の言葉に対し、太一は何も言わなかった。
発言をしても聞き入れてはくれないと諦めたのか。壊れた玩具に飽きたかのように地面に放り出された美加から目が離せなくなっただけのか。
どちらにしても、正樹の暴走を止めようとする人はいなかった。
「ええっと。……『え? 本物? 本物だったらやばいよね』。いや、この手の感想多すぎない? 軽くしか目を通せていないけど、五回に一回はそういった内容なんだけど!」
正樹は笑顔だった。
本物なのか。作り物なのか。動画を配信している正樹たちの行動を疑う内容の書き込みが多くみられ、そのほとんどは批判的なものだった。
正樹は批判的な内容に触れない。
見なかったことにして、さらに話題になりそうなことを探す。
「本物。本物。超有名な心霊スポットに来ているんで! この廃村とか墓場とか! どう考えたって素人が用意できるものじゃないでしょ!」
合いの手は入らない。
今にも倒れそうな顔色をしている太一の視線は正樹に向けられておらず、ただ、カメラだけでは正樹に向け続けていた。
「『マッキー、おかしくなってる』。は? え? なんで?」
正樹は自覚がない。
SNSに書かれている言葉を読み上げながら、信じられないと言わんばかりの顔をしてみせた。
「俺はおかしくなんかないぞー!」
いつもならば彰が正樹の発言にツッコミを入れたところだった。
定番の返しもなければ、太一の小さな笑い声もない。
蘭の呆れたようなため息もなく、美加の煽るような言葉もない。
「そうだろ!? あーくん!」
正樹は当然のように彰の名を呼んだ。
まるで正樹の声に応えるかのようだった。
美加が倒れている近くから外壁を叩くかのような音がし始めた。
その音を聞き、正樹は外壁に視線を向けるものの、そこには美加が倒れているだけだ。
古びた外壁には血痕が残されており、誰も叩いていない。
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