動画配信者が消えた

佐倉海斗

文字の大きさ
上 下
35 / 41
第二話「呪われた動画配信者」

01-30.

しおりを挟む
「ここでコメントを読み上げていくからな!」

 正樹は太一が持つカメラに視線を向けた。

「どんどん『#まあた』で投稿をしてくれ。気になったものがあったら、生配信で読み上げていくんで!」

 正樹の言葉に対し、太一は何も言わなかった。

 発言をしても聞き入れてはくれないと諦めたのか。壊れた玩具に飽きたかのように地面に放り出された美加から目が離せなくなっただけのか。

 どちらにしても、正樹の暴走を止めようとする人はいなかった。

「ええっと。……『え? 本物? 本物だったらやばいよね』。いや、この手の感想多すぎない? 軽くしか目を通せていないけど、五回に一回はそういった内容なんだけど!」

 正樹は笑顔だった。

 本物なのか。作り物なのか。動画を配信している正樹たちの行動を疑う内容の書き込みが多くみられ、そのほとんどは批判的なものだった。

 正樹は批判的な内容に触れない。

 見なかったことにして、さらに話題になりそうなことを探す。

「本物。本物。超有名な心霊スポットに来ているんで! この廃村とか墓場とか! どう考えたって素人が用意できるものじゃないでしょ!」

 合いの手は入らない。

 今にも倒れそうな顔色をしている太一の視線は正樹に向けられておらず、ただ、カメラだけでは正樹に向け続けていた。

「『マッキー、おかしくなってる』。は? え? なんで?」

 正樹は自覚がない。

 SNSに書かれている言葉を読み上げながら、信じられないと言わんばかりの顔をしてみせた。

「俺はおかしくなんかないぞー!」

 いつもならば彰が正樹の発言にツッコミを入れたところだった。

 定番の返しもなければ、太一の小さな笑い声もない。

 蘭の呆れたようなため息もなく、美加の煽るような言葉もない。

「そうだろ!? あーくん!」

 正樹は当然のように彰の名を呼んだ。

 まるで正樹の声に応えるかのようだった。

 美加が倒れている近くから外壁を叩くかのような音がし始めた。

 その音を聞き、正樹は外壁に視線を向けるものの、そこには美加が倒れているだけだ。


 古びた外壁には血痕が残されており、誰も叩いていない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

配信者幽幻ゆうなはかく怪奇を語りき

福留しゅん
ホラー
午後10時、Vdolと呼ばれる動画配信者である幽幻ゆうなによる怪奇語りの配信が行われる。リスナーからの投稿だったり体験談だったり、日常の中に突然遭遇する怪奇にまつわる話を送り届ける。そこそこの人気を集めているが、リスナーの誰もが想像もしていないし考察もしていない。語られる話のどこまでが空想でどこまでが現実なのかを。やがて現実と怪奇の境目が曖昧になっていき、現実は脅かされていく。他でもない、幽幻ゆうなを中心として。 ※他のサイトでも公開中ですが、アルファポリス様が最速です。

廃村の住人が微笑むとき…

ゆきもと けい
ホラー
廃村の調査を依頼された主人公。廃村の理由を知り、恐怖を感じならも調査に向かう。恐怖の真実はいったいどこにあるのか…本当の怖さはどこにあるのか…果たして無事に帰って来られるのだろうか? 短い小説で作っております。読んで頂けた幸いです。

【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド

まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。 事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。 一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。 その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。 そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。 ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。 そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。 第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。 表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。 現在 100話 越え。 エブリスタ・カクヨム・小説家になろうに同時掲載中 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 【総文字数 700,000字 超え 文庫本 約7冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

ハンムラビの行方

シーソーセリ
ホラー
歴史好きの柏木壮太は恋人の由美と自宅でハンムラビ法典の特集をテレビで観ていた。 壮太は自分の過去を知る小さな人形「イザベル」に出会う。自宅のテレビからはかつての自分に傷つけられたものたちの映像が移り、現実にさまざまな復讐を遂げようとしてくる。 付き合って1年の記念日に次々と起こる不可解で理不尽な復讐の世界。 壮太は自身や恋人由里にも降りかかる災いから逃れようとするのだが、イザベルの容赦ない復讐劇が止まらない。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

処理中です...