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第二話「呪われた動画配信者」
01-29.
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「ミカちゃん!」
正樹は何気ない会話を続けるかのように名を呼んだ。
返事はない。既に心肺機能も停止していることだろう。糸の切れた操り人形のように力なく揺れる左腕は今にも千切れそうになっており、両足から血が溢れ出している。
衝突を繰り返している壁は血塗れになり、地面を濡らしている。内蔵が飛び出ていないものの、それも時間の問題だろう。
「気分はどう!?」
正樹の問いかけに対し、太一は引いた目を向けた。
「最高だよな!?」
正樹の目には何かに操られるように壁に衝突をさせられている美加の姿が見えている。それなのに現実離れをした発言ばかりを口走っていた。
「た、たすけ、ないと」
太一は震える声で訴えた。
助けようとするのが遅すぎた。もう間に合わない。
頭の中ではわかっているはずだ。それでも、壊れかけている心の奥底から友人の妹をこのまま死なせてはいけないと訴えられているような気がした。
カメラを持つ手が震えてしまう。
それでは動画配信に支障が出ると思ったのだろう。震え始めて腕をなんとかしようと考えるものの、頭が正常に働かない。
「マッキー」
情けのない声だった。
酒を大量に摂取したかのような気分の高まりを隠しきれていない正樹の耳には、か細い太一の声は届かない。
「みんな! 俺たちは三人の友人が襲われてしまった!」
正樹は動画配信を止めるつもりはないようだ。
正常とは思えない。
頬は熱があるかのように真っ赤に染まり、視線も定まらない。
興奮を隠せていないからだろうか。呼吸も乱れつつある。自身がどのような状態なのかも、正樹は理解をしていないのかもしれない。
「ここには悪霊がいる!」
それどころか、おもむろに携帯電話に触れる。
そして、トレンドに乱立しつつある自身の名前を見て笑みを零す。
「みんなの目にはおかしいことが映っているみたいだな!?」
SNSは止まらない。
再生回数も桁違いに伸び続け、正樹たちの行動が世間の注目を集めている。
正樹は何気ない会話を続けるかのように名を呼んだ。
返事はない。既に心肺機能も停止していることだろう。糸の切れた操り人形のように力なく揺れる左腕は今にも千切れそうになっており、両足から血が溢れ出している。
衝突を繰り返している壁は血塗れになり、地面を濡らしている。内蔵が飛び出ていないものの、それも時間の問題だろう。
「気分はどう!?」
正樹の問いかけに対し、太一は引いた目を向けた。
「最高だよな!?」
正樹の目には何かに操られるように壁に衝突をさせられている美加の姿が見えている。それなのに現実離れをした発言ばかりを口走っていた。
「た、たすけ、ないと」
太一は震える声で訴えた。
助けようとするのが遅すぎた。もう間に合わない。
頭の中ではわかっているはずだ。それでも、壊れかけている心の奥底から友人の妹をこのまま死なせてはいけないと訴えられているような気がした。
カメラを持つ手が震えてしまう。
それでは動画配信に支障が出ると思ったのだろう。震え始めて腕をなんとかしようと考えるものの、頭が正常に働かない。
「マッキー」
情けのない声だった。
酒を大量に摂取したかのような気分の高まりを隠しきれていない正樹の耳には、か細い太一の声は届かない。
「みんな! 俺たちは三人の友人が襲われてしまった!」
正樹は動画配信を止めるつもりはないようだ。
正常とは思えない。
頬は熱があるかのように真っ赤に染まり、視線も定まらない。
興奮を隠せていないからだろうか。呼吸も乱れつつある。自身がどのような状態なのかも、正樹は理解をしていないのかもしれない。
「ここには悪霊がいる!」
それどころか、おもむろに携帯電話に触れる。
そして、トレンドに乱立しつつある自身の名前を見て笑みを零す。
「みんなの目にはおかしいことが映っているみたいだな!?」
SNSは止まらない。
再生回数も桁違いに伸び続け、正樹たちの行動が世間の注目を集めている。
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