動画配信者が消えた

第二話「呪われた動画配信者」

０１－２７．

「だから――」

　正樹が言葉を続けようとした時だった。

　正樹の腹に何かが触れる。それは強い力で正樹を突き飛ばし、正樹は抵抗することも出来ずに背中を地面に打ち付けた。

　それだけでは満足できなかったかのように正樹の身体はなにかに蹴り飛ばされる。成す術もなく数メートル転がっていく。

「いたあああっ!?」

　正樹が身体を起こそうとしている間に悲鳴が響いた。

　美加の身体は無理な姿勢を強いられている。両肩を掴まれ、強引に上半身を反らされる。下半身は相変らず動かすことができず、身体は悲鳴をあげていく。

　まるで折り畳もうとしているかのようだった。

　美加の悲鳴など聞こえていないかのようにカメラはその様子を撮り続ける。

「あ、ああっ」

　強引に身体を反らされ、大きな声が出ない。

　息が絶え絶えになる。大粒の涙は地面を濡らし、苦痛で歪んだ顔は見れたものではなかった。

「あっ」

　骨が折れる音がした。

　それでも美加の身体は強引に引っ張られていく。

　力任せに引っ張られた身体は痙攣する。それでも反らされ続け、後頭部が膝裏と接触をする。骨は何本も折れていた。

　特別、身体が柔らかいわけではない。

　それなのにもかかわらず、強引に折り畳まれた身体は重力に押しつぶされていくかのように地面の中にめり込んでいく。

　悲鳴は上がらなかった。

　呼吸は浅くなり、酸素を求めるように大きく口が開かれた。目は見開かれ、涙が止まらない。

「あーくん、だめ、だ」

　太一は震える声をあげた。
　それでもカメラを回すことを止められない。

「美加ちゃんが死んでしまう」

　激しい痙攣が起きている。

　即死できるほどの致命傷にはなっていないのだろう。それでも、身体の悲鳴は止まらない。

「死んじゃうよ!!」

　太一の声に応える者は誰もいなかった。