動画配信者が消えた

佐倉海斗

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第二話「呪われた動画配信者」

01-26.

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「あーくん? あーくんがいるんだな!?」

 遠慮なく両手で触る。

 触れている部分は彰の腕や肩だろうか。どこを触っているのかもわからない状況にもかかわらず、正樹の目には迷いはなかった。

「太ちゃん! こっちから撮影をしてくれよ!」

「その前に引き離せよ」

「いやいや。見えないものはどうしようもないって!」

 正樹は興奮をしていた。

 目には視えないのにもかかわらず、触っている感覚がある。

 それを楽しんでいるかのようにも見えてしまう。

「……わかった」

 太一はそれを指摘しなかった。

 正樹の指示に従うように美加の顔の方に向かって行く。その間もカメラは美加たちに向けられていた。

「あーくん。聞こえてる?」

 正樹は美加の背中に声をかける。

「もう少し上だな」

 それに対し、太一がカメラ越しで見た位置を伝える。

「この辺?」

 正樹は顔を少し上に向けた。

 美加の背中から視線を外し、見えるのは彰の姿ではなく、自分たちが無我夢中で走ってきた廃墟が立ち並ぶ景色だった。

「なにも見えねえんだけど」

 正樹は緩んだ笑みを浮かべる。

「そこにいるんだろ?」

 正樹は触りながら問いかける。

 返事はない。掌で感じている感触の正体が彰であるという確信はなかった。

「大好きな妹ちゃんが苦しんでるんだぜ? シスコン代表のお兄ちゃんとして、それはヤバいだろ」

 本気で言っているのか。
 ふざけているのか。

「お前が何を考えるのかわからねーけど」

 正樹は右手をカメラに向ける。

「みんながお前を見ているぜ!」

 まるで決め台詞を口にすることができたかのような表情を作り、顔をカメラに向ける。それに対し、太一は眉を潜めていた。

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