29 / 41
第二話「呪われた動画配信者」
01-24.
しおりを挟む
太一はカメラを自身の左側に向ける。
カメラには腕を動かすことなく、正樹たちを追いかける彰の姿が映し出される。彰は太一に視線を向けることも、カメラを向けられていることに気付くこともなく、そのまま太一を追い越していった。
「まーくん!」
声が震えてしまう。
カメラの向きを正樹たちに向ける。その背後に音もなく迫っている彰の姿がカメラには映し出されており、視聴者だけはその恐怖を正確に理解していた。
「あーくんが!」
走りながらではこの状況を正確に伝えられない。
それでも、太一は必死に声をあげながらも走り続けた。
「あっ」
美加がバランスを崩した。
そのまま、地面に叩きつけられるように転倒をする。美加の腕を掴んでいた正樹も引っ張られて、転びそうになった。
「うっ」
美加は小さな悲鳴を上げた。
「ミカちゃん! 早く! 逃げないと!!」
正樹は立つように促した。
その目には美加が転んだだけのように映ったのだろう。
「む、むり、だよ」
美加の声は震えていた。
必死に立ち上がろうと両手を動かすものの、美加の下半身は鉛のように重くなっている。
「どうして!?」
正樹の眼には美加が地面に寝転んでいるようにしか見えない。
「重いの! 動かないの!」
美加もなにが起きているのか、理解をしていない。
太一のカメラだけが真実を映し出していた。美加の腰辺りを掴んでいるのは彰だ。両足が動けないように美加の上に座り込んでいる。
「痛い! 痛いよ!!」
美加は悲鳴上げる。
原因がわからない正樹は困ったような顔をしながら、携帯電話を弄った。
それから配信中となっている動画を開く。撮影と同時に配信をされている『心霊スポットを巡って見た!』はカメラ越しの光景が映し出されている。
それを指摘されたわけではないのにもかかわらず、知っていた。
カメラには腕を動かすことなく、正樹たちを追いかける彰の姿が映し出される。彰は太一に視線を向けることも、カメラを向けられていることに気付くこともなく、そのまま太一を追い越していった。
「まーくん!」
声が震えてしまう。
カメラの向きを正樹たちに向ける。その背後に音もなく迫っている彰の姿がカメラには映し出されており、視聴者だけはその恐怖を正確に理解していた。
「あーくんが!」
走りながらではこの状況を正確に伝えられない。
それでも、太一は必死に声をあげながらも走り続けた。
「あっ」
美加がバランスを崩した。
そのまま、地面に叩きつけられるように転倒をする。美加の腕を掴んでいた正樹も引っ張られて、転びそうになった。
「うっ」
美加は小さな悲鳴を上げた。
「ミカちゃん! 早く! 逃げないと!!」
正樹は立つように促した。
その目には美加が転んだだけのように映ったのだろう。
「む、むり、だよ」
美加の声は震えていた。
必死に立ち上がろうと両手を動かすものの、美加の下半身は鉛のように重くなっている。
「どうして!?」
正樹の眼には美加が地面に寝転んでいるようにしか見えない。
「重いの! 動かないの!」
美加もなにが起きているのか、理解をしていない。
太一のカメラだけが真実を映し出していた。美加の腰辺りを掴んでいるのは彰だ。両足が動けないように美加の上に座り込んでいる。
「痛い! 痛いよ!!」
美加は悲鳴上げる。
原因がわからない正樹は困ったような顔をしながら、携帯電話を弄った。
それから配信中となっている動画を開く。撮影と同時に配信をされている『心霊スポットを巡って見た!』はカメラ越しの光景が映し出されている。
それを指摘されたわけではないのにもかかわらず、知っていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

ママが呼んでいる
杏樹まじゅ
ホラー
鐘が鳴る。夜が来る。──ママが彼らを呼んでいる。
京都の大学に通う九条マコト(くじょうまこと)と恋人の新田ヒナ(あらたひな)は或る日、所属するオカルトサークルの仲間と、島根にあるという小さな寒村、真理弥村(まりやむら)に向かう。隠れキリシタンの末裔が暮らすというその村には百年前まで、教会に人身御供を捧げていたという伝承があるのだった。その時、教会の鐘が大きな音を立てて鳴り響く。そして二人は目撃する。彼らを待ち受ける、村の「夜」の姿を──。

終の匣
凜
ホラー
父の転勤で宮下家はある田舎へ引っ越すことになった。見知らぬ土地で不安に思う中、町民は皆家族を快く出迎えた。常に心配してくれ、時には家を訪ねてくれる。通常より安く手に入った一軒家、いつも笑顔で対応してくれる町民たち、父の正志は幸運なくじを引き当てたと思った。
しかし、家では奇妙なことが起こり始める。後々考えてみれば、それは引っ越し初日から始まっていた。
親切なのに、絶対家の中には入ってこない町民たち。その間で定期的に回されている謎の巾着袋。何が原因なのか、それは思いもよらない場所から見つかった。
都市伝説レポート
君山洋太朗
ホラー
零細出版社「怪奇文庫」が発行するオカルト専門誌『現代怪異録』のコーナー「都市伝説レポート」。弊社の野々宮記者が全国各地の都市伝説をご紹介します。本コーナーに掲載される内容は、すべて事実に基づいた取材によるものです。しかしながら、その解釈や真偽の判断は、最終的に読者の皆様にゆだねられています。真実は時に、私たちの想像を超えるところにあるのかもしれません。

終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

奇怪未解世界
五月 病
ホラー
突如大勢の人間が消えるという事件が起きた。
学内にいた人間の中で唯一生存した女子高生そよぎは自身に降りかかる怪異を退け、消えた友人たちを取り戻すために「怪人アンサー」に助けを求める。
奇妙な契約関係になった怪人アンサーとそよぎは学校の人間が消えた理由を見つけ出すため夕刻から深夜にかけて調査を進めていく。
その過程で様々な怪異に遭遇していくことになっていくが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる