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第二話「呪われた動画配信者」
01-23.
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「なんなんだよ!」
正樹は戸惑いを隠せていなかった。
正樹の声を聞き、太一はカメラを正樹に向ける。
そして、カメラ越しに見ることができたのは、正樹の足元に現れた無数の白い手によって彰の身体が動かされている光景だった。
「ひっ」
太一は思わず声をあげる。
それからカメラを見るのを止めた。
カメラ越しではなく、直接、正樹を見てみると白い手は見えない。
しかし、口角が上がったままの彰の身体は普通ではない動きをしていた。地面から突き動かされているかのような動きだ。骨や筋肉の構成を無視したような動きで立たせようとしている。
まるで初めて触った操り人形で遊んでいるかのようだ。
「こっちに来るなよ!!」
正樹の眼には彰の身体を操ろうとしている白い手が見えているのだろうか。
怯え切った声をあげながら、逃げ出した。その手には動くことさえもできなかった美加の左腕が掴まれており、恐怖で混乱をしている頭でも友人の妹を助けなければならないと判断することができたのだろう。
墓地から逃走をし始めた正樹の後ろを追いかける。
太一はカメラを正樹に向け続ける。
「うわっ」
太一はなにかを踏みつけた。
反射的にカメラを足元に向けながら、視線を足元に向けてみたものの、なにもない。そこには地面があるだけだ。小石の一つも見当たらない。
「なんなんだよ」
太一は思わず口にしたものの、再び走り始めた。
カメラを正樹と正樹に引っ張られる形で走っている美加に向ける。一心不乱に走っていく正樹には目的地などないだろう。とにかく、彰の様子がおかしくなった墓地から逃げることしか考えていない。
太一は正樹よりも走るのが苦手だった。
だからこそ、二人の後ろを追いかけるように走っていた。
「ひっ」
左側だけが寒気がする。
まるで氷水をかけられたかのような寒気だ。思わず身震いをしてしまう。
左側に視線を向けることはできなかった。そちらを見てしまっては全てが終わってしまうと本能だけで理解していたのだろう。
正樹は戸惑いを隠せていなかった。
正樹の声を聞き、太一はカメラを正樹に向ける。
そして、カメラ越しに見ることができたのは、正樹の足元に現れた無数の白い手によって彰の身体が動かされている光景だった。
「ひっ」
太一は思わず声をあげる。
それからカメラを見るのを止めた。
カメラ越しではなく、直接、正樹を見てみると白い手は見えない。
しかし、口角が上がったままの彰の身体は普通ではない動きをしていた。地面から突き動かされているかのような動きだ。骨や筋肉の構成を無視したような動きで立たせようとしている。
まるで初めて触った操り人形で遊んでいるかのようだ。
「こっちに来るなよ!!」
正樹の眼には彰の身体を操ろうとしている白い手が見えているのだろうか。
怯え切った声をあげながら、逃げ出した。その手には動くことさえもできなかった美加の左腕が掴まれており、恐怖で混乱をしている頭でも友人の妹を助けなければならないと判断することができたのだろう。
墓地から逃走をし始めた正樹の後ろを追いかける。
太一はカメラを正樹に向け続ける。
「うわっ」
太一はなにかを踏みつけた。
反射的にカメラを足元に向けながら、視線を足元に向けてみたものの、なにもない。そこには地面があるだけだ。小石の一つも見当たらない。
「なんなんだよ」
太一は思わず口にしたものの、再び走り始めた。
カメラを正樹と正樹に引っ張られる形で走っている美加に向ける。一心不乱に走っていく正樹には目的地などないだろう。とにかく、彰の様子がおかしくなった墓地から逃げることしか考えていない。
太一は正樹よりも走るのが苦手だった。
だからこそ、二人の後ろを追いかけるように走っていた。
「ひっ」
左側だけが寒気がする。
まるで氷水をかけられたかのような寒気だ。思わず身震いをしてしまう。
左側に視線を向けることはできなかった。そちらを見てしまっては全てが終わってしまうと本能だけで理解していたのだろう。
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