動画配信者が消えた

佐倉海斗

文字の大きさ
上 下
28 / 41
第二話「呪われた動画配信者」

01-23.

しおりを挟む
「なんなんだよ!」

 正樹は戸惑いを隠せていなかった。

 正樹の声を聞き、太一はカメラを正樹に向ける。

 そして、カメラ越しに見ることができたのは、正樹の足元に現れた無数の白い手によって彰の身体が動かされている光景だった。

「ひっ」

 太一は思わず声をあげる。

 それからカメラを見るのを止めた。

 カメラ越しではなく、直接、正樹を見てみると白い手は見えない。

 しかし、口角が上がったままの彰の身体は普通ではない動きをしていた。地面から突き動かされているかのような動きだ。骨や筋肉の構成を無視したような動きで立たせようとしている。

 まるで初めて触った操り人形で遊んでいるかのようだ。

「こっちに来るなよ!!」

 正樹の眼には彰の身体を操ろうとしている白い手が見えているのだろうか。

 怯え切った声をあげながら、逃げ出した。その手には動くことさえもできなかった美加の左腕が掴まれており、恐怖で混乱をしている頭でも友人の妹を助けなければならないと判断することができたのだろう。

 墓地から逃走をし始めた正樹の後ろを追いかける。

 太一はカメラを正樹に向け続ける。

「うわっ」

 太一はなにかを踏みつけた。

 反射的にカメラを足元に向けながら、視線を足元に向けてみたものの、なにもない。そこには地面があるだけだ。小石の一つも見当たらない。

「なんなんだよ」

 太一は思わず口にしたものの、再び走り始めた。

 カメラを正樹と正樹に引っ張られる形で走っている美加に向ける。一心不乱に走っていく正樹には目的地などないだろう。とにかく、彰の様子がおかしくなった墓地から逃げることしか考えていない。

 太一は正樹よりも走るのが苦手だった。

 だからこそ、二人の後ろを追いかけるように走っていた。

「ひっ」

 左側だけが寒気がする。

 まるで氷水をかけられたかのような寒気だ。思わず身震いをしてしまう。

 左側に視線を向けることはできなかった。そちらを見てしまっては全てが終わってしまうと本能だけで理解していたのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

代償

とろろ
ホラー
山下一郎は、どこにでもいる平凡な工員だった。 彼の唯一の趣味は、古い骨董品店の中を見て回ること。 ある日、彼は謎の本をその店で手に入れる。 それは、望むものなら何でも手に入れることができる本だった。 その本が、導く先にあるものとは...!

御院家さんがゆく‼︎

涼寺みすゞ
ホラー
顔はいい、性格もたぶん。 でも何故か「面白くない」とフラれる善法の前に、ひとりの美少女が現れた。 浮世離れした言動に影のある生い立ち、彼女は密教の隠された『闇』と呼ばれる存在だった。 「秘密を教える――密教って、密か事なんよ? 」 「普段はあり得ないことが バタン、バタン、と重なって妙なことになるのも因縁なのかなぁ? 」 出逢ったのは因縁か? 偶然か?

【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド

まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。 事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。 一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。 その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。 そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。 ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。 そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。 第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。 表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】『霧原村』~少女達の遊戯が幽の地に潜む怪異を招く~

潮ノ海月
ホラー
五月の中旬、昼休中に清水莉子と幸村葵が『こっくりさん』で遊び始めた。俺、月森和也、野風雄二、転校生の神代渉の三人が雑談していると、女子達のキャーという悲鳴が。その翌日から莉子は休み続け、学校中に『こっくりさん』の呪いや祟りの噂が広まる。そのことで和也、斉藤凪紗、雄二、葵、渉の五人が莉子の家を訪れると、彼女の母親は憔悴し、私室いた莉子は憑依された姿になっていた。莉子の家から葵を送り届け、暗い路地を歩く渉は不気味な怪異に遭遇する。それから恐怖の怪奇現象が頻発し、ついに女子達が犠牲に。そして怪異に翻弄されながらも、和也と渉の二人は一つの仮説を立て、思ってもみない結末へ導かれていく。【2025/3/11 完結】

【本当にあった怖い話】

ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、 取材や実体験を元に構成されております。 【ご朗読について】 申請などは特に必要ありませんが、 引用元への記載をお願い致します。

処理中です...