動画配信者が消えた

佐倉海斗

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第二話「呪われた動画配信者」

01-22.

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「あーくん!!」

 正樹は彰の耳元で大声を上げる。

 普段ならばそれに対して嫌そうな顔を浮かべて、文句の一つや二つを口にするだろう。嫌味を込めた言葉を吐き捨てることだろう。

 それすらもなかった。

 彰は耳元で名前を呼ばれていることにも気づけない。

 その視線は美加を見下ろしているだけだった。感情の籠っていない。どこを見ているのかさえも分からない視線だ。

「 」

 僅かに彰の口が動いた。

 傍にいる美加と正樹にも聞こえないようなか細い声だった。その隙をつくかのように正樹は彰を突き飛ばすことに成功し、美加の腕から彰は手を離した。

 成す術もなく彰は地面に尻をつける。

 衝撃はあったはずだ。それなにもかかわらず、彰の表情は何一つ変わらない。

「 」

 また口が動く。

 それから彰の口角はゆっくりと上がっていく。

「みーつけた」

 その声は太一たちの背後から聞こえた。

 反射的に飛び跳ねた正樹たちのことを嘲笑うようなこともせず、楽しそうな笑い声を漏らす声は太一の背後から聞こえてくる。

「みーつけた」

 まるでかくれんぼをしている子どものような声だ。

 それは聞き覚えのある声だった。


「……ランラン?」

 美加は声の主の名を口にする。

 それはありえないものだった。

 呼びかけに応えるわけでもなく、笑い声だけが聞こえてくる。美加は太一の後ろに視線を向けてみるものの、人の姿を認識することはできなかった。

 美加の視線に映るのは古びた廃墟や踏み荒らされた地面だけだ。

 地面に残っている足跡は墓地に向かった時についたものだろう。そこには先ほどの声の主の姿はない。

「 」

 また彰の口が動いた。

 それからゆっくりとした動きで立ち上がろうとするものの、足腰に力が入らず、上手く動くことができない。
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