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第二話「呪われた動画配信者」
01-20.
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それが何なのか、考えている余裕はなかった。
「 」
音はしなかった。
彰の口が僅かに動いたのをカメラが捉えていることに誰も気づかない。
「 」
彰の眼には光はない。
どこを見ているのかわからない虚ろな目を正樹に向けていたが、何も伝わらないことを理解したのだろうか。緩慢な動きで顔を動かし、美加を見つめた。
「ひっ」
美加は一歩下がった。
美加を見つめる目は蘭と同じだった。地面に引きずり込まれる時に見てしまった蘭の表情と彰の表情が重なったような気がしたのだろうか。
敬愛する兄に対する態度ではなかった。
大好きな兄だと幸せそうに語っていたとは思えない態度だった。
「逃げよう」
太一は冷静な声で訴えた。
それでもカメラを彰たちに向け続けるのは忘れない。
「逃げる?」
それに対し、正樹は知らない言葉を聞いたかのような声をあげた。
視線をカメラに向ける。
「あーくんを連れて行こう」
それは太一や美加に向かって発した言葉ではない。
カメラの向こう側にいるはずの視聴者に向けられた言葉だった。
「何も言わないだけだし。きっと、落ち着いたらいつものあーくんに――」
「いやああっ!! 止めて!!」
正樹の言葉を遮ったのは美加の悲鳴だった。
太一はカメラを正樹ではなく、美加に向ける。
いつの間にか移動をしていた彰は美加の腕を掴み、強引に何処かに連れて行こうとしていた。振り払おうとする美加を嗜めることもせず、無言のままの彰の眼はどこを見ているのかわからない。
か細い美加の腕は折れてしまうのではないか。
逃がさないというかのように力いっぱい握り締めている。振りほどけないほどに力が込める彰の表情は何も変わらなかった。
「……おかしいだろ」
正樹は何度も瞬きをした。
目の前で繰り広げられていることを受け入れられなかったのだろう。
「 」
音はしなかった。
彰の口が僅かに動いたのをカメラが捉えていることに誰も気づかない。
「 」
彰の眼には光はない。
どこを見ているのかわからない虚ろな目を正樹に向けていたが、何も伝わらないことを理解したのだろうか。緩慢な動きで顔を動かし、美加を見つめた。
「ひっ」
美加は一歩下がった。
美加を見つめる目は蘭と同じだった。地面に引きずり込まれる時に見てしまった蘭の表情と彰の表情が重なったような気がしたのだろうか。
敬愛する兄に対する態度ではなかった。
大好きな兄だと幸せそうに語っていたとは思えない態度だった。
「逃げよう」
太一は冷静な声で訴えた。
それでもカメラを彰たちに向け続けるのは忘れない。
「逃げる?」
それに対し、正樹は知らない言葉を聞いたかのような声をあげた。
視線をカメラに向ける。
「あーくんを連れて行こう」
それは太一や美加に向かって発した言葉ではない。
カメラの向こう側にいるはずの視聴者に向けられた言葉だった。
「何も言わないだけだし。きっと、落ち着いたらいつものあーくんに――」
「いやああっ!! 止めて!!」
正樹の言葉を遮ったのは美加の悲鳴だった。
太一はカメラを正樹ではなく、美加に向ける。
いつの間にか移動をしていた彰は美加の腕を掴み、強引に何処かに連れて行こうとしていた。振り払おうとする美加を嗜めることもせず、無言のままの彰の眼はどこを見ているのかわからない。
か細い美加の腕は折れてしまうのではないか。
逃がさないというかのように力いっぱい握り締めている。振りほどけないほどに力が込める彰の表情は何も変わらなかった。
「……おかしいだろ」
正樹は何度も瞬きをした。
目の前で繰り広げられていることを受け入れられなかったのだろう。
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