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第二話「呪われた動画配信者」
01-15.
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「まあ、どうでもいいんだけどさ」
興味がないのだろうか。
正樹は花立てから手を離し、再び歩き始めた。
「なんにもないなー」
美加が悲鳴を上げた付近に到着したものの、なにも落ちていない。周囲を懐中電灯で照らし、それらしきものを探すが、なにかが置かれているような様子はない。
「マッキー」
彰がなにかを見つけたようだ。
「この墓、見てみろよ」
力のない声だった。
顔色も悪く、今にも動画配信を止めようと言い出したとしてもおかしくはない不安げな表情を浮かべている。
「……うわ」
正樹も思わず引いてしまった。
懐中電灯で左側に立てられている墓石を照らす。
墓石は新しいものだった。掘られたばかりのように見える文字は所々血で汚れており、苔の一つもない綺麗な墓石にもかかわらず、僅かに傾いていた。
「こんなの、知らねぇんだけど」
本音が零れ落ちる。
カメラを回している太一の表情も固くなる。
「あー……。視聴者のみんな。なんてことでしょう」
ふざける気力もなくなりつつある。
正樹はカメラに視線を向けた。
「ランランのお墓を見つけちゃいました」
墓石には伊藤家の墓と掘られており、横には伊藤蘭と掘られている。なにより、名前の下に掘られている没年月日が今日であることを考えれば、蘭の為に用意されていると考えるのが自然だろう。
「これからランランのご両親に連絡を――」
「いやああああっ!! お兄ちゃん! どこに行ったの!?」
正樹の言葉を遮り、悲鳴を上げたのは美加だった。
「……あーくん?」
美加を注意しようとした正樹は何度も瞬きをした。隣りにいたはずの彰の姿がない。
周囲を見渡してみるのもの、彰らしき人影はなく、墓石の間に隠れているわけでもなさそうだ。
興味がないのだろうか。
正樹は花立てから手を離し、再び歩き始めた。
「なんにもないなー」
美加が悲鳴を上げた付近に到着したものの、なにも落ちていない。周囲を懐中電灯で照らし、それらしきものを探すが、なにかが置かれているような様子はない。
「マッキー」
彰がなにかを見つけたようだ。
「この墓、見てみろよ」
力のない声だった。
顔色も悪く、今にも動画配信を止めようと言い出したとしてもおかしくはない不安げな表情を浮かべている。
「……うわ」
正樹も思わず引いてしまった。
懐中電灯で左側に立てられている墓石を照らす。
墓石は新しいものだった。掘られたばかりのように見える文字は所々血で汚れており、苔の一つもない綺麗な墓石にもかかわらず、僅かに傾いていた。
「こんなの、知らねぇんだけど」
本音が零れ落ちる。
カメラを回している太一の表情も固くなる。
「あー……。視聴者のみんな。なんてことでしょう」
ふざける気力もなくなりつつある。
正樹はカメラに視線を向けた。
「ランランのお墓を見つけちゃいました」
墓石には伊藤家の墓と掘られており、横には伊藤蘭と掘られている。なにより、名前の下に掘られている没年月日が今日であることを考えれば、蘭の為に用意されていると考えるのが自然だろう。
「これからランランのご両親に連絡を――」
「いやああああっ!! お兄ちゃん! どこに行ったの!?」
正樹の言葉を遮り、悲鳴を上げたのは美加だった。
「……あーくん?」
美加を注意しようとした正樹は何度も瞬きをした。隣りにいたはずの彰の姿がない。
周囲を見渡してみるのもの、彰らしき人影はなく、墓石の間に隠れているわけでもなさそうだ。
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