動画配信者が消えた

第二話「呪われた動画配信者」

０１－９．

「墓地の説明は？」

「いる？　見たまんまだろ？」

「そうだけどさ。設定的に必要だろ？」

　彰の言葉を聞き、納得したのだろう。

　正樹はズボンのポケットを漁るが、目的のものが見つからないらしく、首を傾げた。

「……あっちゃん。説明よろしく」

　正樹はわざとらしく舌を出した。

「いや、お前がその顔をしてもキモいだけだわ」

　彰は冷めた声でツッコミを入れる。

「カンペを無くしたマッキーに代わって説明いれまーす」

　正樹の真似をしているのだろうか。

「お兄ちゃん。全然似てないよ」

　咳が落ち着いたのだろう。

　美加は楽しそうに笑っていた。

「この廃村には墓地が一つだけある」

　真似をするのを止め、彰は歩きながら事前に決めていた設定を語る。

「村人は全員そこにいる。殺人鬼によって生きたまま共通の墓地の中に入れられた人もいるらしい」

　怖い雰囲気を出そうと、わざとらしく低い声を出す。

「そして、夜な夜な、助けを求める声が！　泣いている声が！　するらしい」

　強調をするかのように言い切り、視線を正樹に向ける。正樹は完璧だと言わんばかりの顔をした。

「あっちゃんが言った話は俺たちの地元ではわりと有名で。肝試しをする人が絶えないのも、その亡霊が引き寄せているんだとか！」

　嘘だ。

　その場の勢いだけで話を作り上げる。

「こわーい」

　美加が棒読みの声を上げる。

「お兄ちゃん。怖いよー」

　美加は彰に抱きつきながら、視線をカメラに向ける。それから視聴者を挑発するかのように中指だけを立てて、睨みつける。

「美加？」

「なーに？」

「これ、生放送だからな」

　彰に言われ、美加は満面の笑みを浮かべる。