動画配信者が消えた

第二話「呪われた動画配信者」

０１－４．

「大ちゃんはカメラに集中！　ランランの渾身の見せ場をしっかり撮っておけよ！」

　蘭を助けようと腕を伸ばした太一に対し、正樹は邪魔をした。そうしている間にも蘭の体は引きずられていく。

「痛い！　やめて！　助けて!!」

　見せ場などと言っている余裕は蘭にはなかった。

　左腕を強引に後ろに引っ張られ、体のバランスを崩す。足元の土が濡れていたのだろうか。足を滑らせ、倒れ込んだ。

「いやっ……!!」

　左腕を引っ張られる。

「助けて！　助けてよ！」

　蘭の声は届いていないのだろうか。

「太一!!」

　必死に抵抗をする蘭の体は次第に土にまみれていく。

「ひいっ！」

　蘭の両足が動かなくなる。

　地面の中から蘭の体を引きずりこもうとしているかのように、徐々に両足が地面の中に埋もれていく。

「ランラン！」

　このままでは大変なことになる。

　そのことを理解したのだろう。

　見ているだけだった美加が蘭の元に駆け寄る。

「今、助け――」

　蘭の右腕を掴もうとした時だった。

「――？」

　なにかの声がした。
　はっきりとは聞き取れなかった。

「なに？　ランラン。聞こえないよ!!」

　美加はそれが蘭の声だと思ったのだろう。

　返事をしてしまった。

「ランラン？」

　思い出したかのように、美加は蘭に手を伸ばした。

「来ちゃダメ!!」

　蘭は反射的に美加の手を振り払った。

「逃げ――」

　蘭には声が聞こえていたのだろうか。