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第一話「物語の始まり」
01-3.
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この電車に乗る以外の方法はなかったのである。
「……」
声だった。
聞き取ることができない小さな声だ。
電車の中にもかかわらず、少女の耳にははっきりとその音が声であると認識できる。だが、なにを言っているのか、理解をすることはできない。
「……」
また聞こえた。
少女はその声に反応をすることができない。
あの日、明らかにおかしい子どもと遭遇をした以降、度々同じような現象に悩まされていた。声がする方向を向けばおかしな状況に陥るのはわかっていた。
「……」
それが幽霊と呼ばれるものたちなのだろう。
なぜ、少女が視えるようになったのか、わからない。
少女は眼を閉じた。眼を閉じてしまえば声は気になっても、恐ろしいものを見なくてすむ。そう考えたのだろう。
「――おい」
声がはっきりと聞こえた。
しかし、聞いたことがない声だった。
「おい」
今度は女性の声だ。
「おい」
今度は男性の声だ。
少女の足になにかが触れた。冷たくも暖かくもない。ただ、なにかがそこにいると主張しているだけの感覚だった。
「……っ!!」
目を開けてしまった。声はでなかった。
少女の目の前には老婆が立っていた。あの時の子どもと同じ、真っ赤な眼をしている。
見開かれた目、引き裂かれたような口。
なぜだろうか。愉快そうに笑っているようにも見える。
「視えてるんだろ」
はっきりと聞こえる。
まるで生きている人間のようだった。
「……え?」
思わず、返事をしてしまった。
「……」
声だった。
聞き取ることができない小さな声だ。
電車の中にもかかわらず、少女の耳にははっきりとその音が声であると認識できる。だが、なにを言っているのか、理解をすることはできない。
「……」
また聞こえた。
少女はその声に反応をすることができない。
あの日、明らかにおかしい子どもと遭遇をした以降、度々同じような現象に悩まされていた。声がする方向を向けばおかしな状況に陥るのはわかっていた。
「……」
それが幽霊と呼ばれるものたちなのだろう。
なぜ、少女が視えるようになったのか、わからない。
少女は眼を閉じた。眼を閉じてしまえば声は気になっても、恐ろしいものを見なくてすむ。そう考えたのだろう。
「――おい」
声がはっきりと聞こえた。
しかし、聞いたことがない声だった。
「おい」
今度は女性の声だ。
「おい」
今度は男性の声だ。
少女の足になにかが触れた。冷たくも暖かくもない。ただ、なにかがそこにいると主張しているだけの感覚だった。
「……っ!!」
目を開けてしまった。声はでなかった。
少女の目の前には老婆が立っていた。あの時の子どもと同じ、真っ赤な眼をしている。
見開かれた目、引き裂かれたような口。
なぜだろうか。愉快そうに笑っているようにも見える。
「視えてるんだろ」
はっきりと聞こえる。
まるで生きている人間のようだった。
「……え?」
思わず、返事をしてしまった。
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