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第三話 賢妃の才能は底知れない

01-17.

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 ……誰かが裏から手を回した可能性もある。

 蜂貴人が藍洙のように利用されていた可能性は高い。運が悪かったのは、蜂貴人には才能があったことだろう。

 そうでなければ、濡れ衣だ。

 麒麟の加護を破るというのは相当の実力者であったとして難しい。

「お母上は巻き込まれたのかもしれません」

「なぜ、そう思う。現状、誰よりも疑わしいだろう」

「はい。誰よりも疑わしい立場に立たせることにより、その背に隠れている者こそが先帝の事件と恐らくは今回の事件の犯人でしょう」

 香月は確信のない言葉を口にした。

 それに対し、俊熙は僅かに目を細ませて笑った。

「いやはや、驚いた」

 俊熙はそのことに気づいていた。

 気づいていながらも、蜂貴人が犯人であるかのように嘆いていたのだ。すべては香月がどこまで俊熙に忠実であり、率直な意見を述べて来れるのかを調べる為のわざとらしい演技だった。

 ……嫌な性格をしている。

 俊熙に対する好感度は下がった。

 試されていたのだと気づいた香月は無表情で俊熙を見上げる。その顔は人形のように美しく、今にも怪奇事件を引き起こしそうなくらいに不気味だった。

「すまない。香月。そこまで言い当てたのは香月だけでな」

「そうですか」

「それで、つい、楽しくなってしまったんだ」

 俊熙は自白する。

 それに対し、香月はわざとらしく礼の姿勢をとった。

「今宵は他妃の元でお休みくださいませ」

 香月の言葉は、さっさと玄武宮から出て行けを意味している。

 それに気づいた俊熙は露骨なまでに肩を落とした。

「冗談だろう? 香月。俺の最愛の妃。お前以外のところで眠るなんて笑えない」

「冗談ではありません。後宮はその為の場所です」

「お前以外だと萎えてしまうのだよ? 哀れに思わないのか?」

「思いません」

 香月は容赦なく会話を断ち切った。

 それに対し、俊熙は諦める様子はなかった。
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