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第三話 賢妃の才能は底知れない

01-7.

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 雲嵐はゆっくりと立ち上がり、香月に深々と頭を下げてから背を向けた。なにも話さないように言い付けられているとはいえ、その姿は寂しいものだった。

「父上は雲嵐になにをした?」

「ご当主様は彼が話せないように舌をお切りになられました。そして、罪人として扱うようにとおっしゃっておられました」

 嘉瑞の言葉に香月は目を伏せた。

 ……父上のやりそうなことだ。

 話せないようにと舌を切られていてもおかしくはない。

 そこまで徹底する人だと知っていた。

 ……あの人は妙なところを徹底したがる。

「彼は罪を犯したのです。それを償う為に宦官になりました」

 嘉瑞は淡々と語る。

 ……罪か。

 玄家は罪人を徹底的に追い詰め、最後には死に至らせる風習が残っている。情報を抜き取れば用済みだといわんばかりの拷問は死を前提にしたものばかりだ。

 ……雲嵐がなにをしたというのだ。

 賢妃となった香月の幼馴染だった。

 幼い頃から香月の付き人だった。

 同い年の相手に好意を寄せたところでおかしくはない話だ。二人の身分差がなければ、周囲が祝福されたことだろう。

 ……父上は身分を重視される傾向が強い。

 なにが父をそうさせているのか、香月にはわからなかった。

「そうか」

 香月はやっとのことで言葉を口にすることができた。

「玄武宮では宦官を罪人として扱わないと決めている。嘉瑞もそれに従え」

 香月の考えは玄武宮の指針となる。

 賢妃の考えを否定できる侍女や宦官はいないと知っているからこそ、明言した。

「承知いたしました」

「二人には苦労をかけることになる。すまないな」

「いえ。あなた様にお仕えをする為、宦官になったのです。お気になさらないでください」

 嘉瑞は自ら名乗り上げたのだろう。

 二人の待遇の差は、元々の身分によるものだ。
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