後宮妃は木犀の下で眠りたい

佐倉海斗

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第三話 賢妃の才能は底知れない

01-3.

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「二人送られてくる宦官の一人は、雲嵐か……」

「ご迷惑をおかけいたします。賢妃様。愚息には賢妃様には近づかぬように言い聞かせます」

「それはしなくていい」

 香月と雲嵐が親しくしていたのは、雲婷も知っている。

 だからこそ、香月は否定をしたのだが、雲婷はすべてを理解しているからこそ首を左右に振った。

「賢妃様は皇帝陛下の妃であります。その尊い方に恋慕を抱くのは罪でございます」

 雲婷は罪を告白するように言った。

 後宮は皇帝の所有物だと雲嵐も理解をしているはずだ。

「母として愚息の罪をお詫び申し上げます。必ずや、賢妃様に近寄らせはいたしません。必ずや、賢妃様を守ってみせましょう。どうか、お許しくださいませ」

 雲婷の言葉を香月は否定するわけにはいかなかった。

 厳しい母親の目が離れた途端に、雲嵐は己の意志を貫いた。それは香月を毒の華のような後宮から守り、傍にいたいという抱いてはいけない欲を満たす為だ。

 雲婷はそんな雲嵐が許せなかった。

「……わかった」

 香月は視線を雲婷から反らし、受け取った文を雲婷に返した。

「明明と行動を共にさせ、報告はすべて明明にさせる。そうすれば、私と顔を合わせる機会は減るだろう」

「寛大な御心に感謝をいたします」

「……それ以降は随時対処する。私の傍に控えさせるもう一人の宦官には、心当たりはないか?」

 香月の問いかけに対し、雲婷は首を左右に振った。

「はい。ございません」

「……そうか」

 香月は嫌な予感を拭えなかった。

 ……父上の考えそうなことだ。

 香月の為ならば、どのようなことをする相手を用意するだろう。今回、後宮の争いに巻き込まれたと激怒をしていたらしいと雲婷を通じて香月の耳に入っている。

 ……梓睿。

 十六歳の義弟のことが頭をよぎる。
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