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第三話 賢妃の才能は底知れない
01-2.
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……雲婷が動揺するようなことが起きたのだろうか。
握りしめられた文には雲婷の心を乱す言葉が綴られていたのだろう。
「雲嵐が賢妃様にお仕えすることをお許しください」
雲婷は両膝をつき、懇願する。
その手に握りしめられていた文を震える手で香月に差し出した。
「……宦官に志願をしたのか」
香月は差し出された文を読み、呆れたようにため息をこぼした。
……愚かな。
宦官は刑罰を受けた男性がなるものだ。自主的に宦官になったとしても、刑罰を受けたのだと誤解され、見下される立場になる。雲嵐はそれを理解していながら、自らの意思で志願したのだろう。
雲嵐もわかっていたはずだ。
玄家に留まり続ければ、道術は使えないとは言え、武術の達人の域に到達できただろう。そうすれば、当主の側近にはなれずとも、紅花の護衛にはなれたかもしれない。
その可能性を投げ捨て、雲嵐は宦官になる道を選んだ。
……氷叡山にいてくれたら、よかったものを。
玄家の一族と門弟が暮らしている李帝国でもっとも過酷な雪山として知られている氷叡山は、香月にとっては懐かしい故郷だ。
李帝国に属するものの、あまりにも過酷な土地に玄家の一族と門弟以外は近づかない。閉ざされた環境は香月にとって心地の良いものだった。
「志願したのならばしかたがない」
香月に止めることはできなかった。
玄家にいた頃ならば、立場を投げ捨ててでも阻止しようとしただろう。
宦官は好ましい存在ではない。
しかし、皇帝以外で男性が後宮に足を踏み入れることが許されている唯一の方法でもある。その為、妃の中には侍女だけではなく、宦官を護衛として雇っている者も少なくはない。
黄藍洙の死により、宦官を雇う者が増えるだろう。
女の花園に放り込まれた宦官は理性を失う者もいる。
しかし、万が一のことが起きれば処罰されて命を奪われるのは、皇帝を裏切った妃ではなく、皇帝の所有物に手を出した宦官だけである。
当然のことながら、皇帝を裏切った妃は冷宮送りになるか、褒美として官吏に下賜される。
それを利用し、悪意をもって宦官を利用する女性もいる。
そのような場所に雲嵐は足を踏み入れることになる。
握りしめられた文には雲婷の心を乱す言葉が綴られていたのだろう。
「雲嵐が賢妃様にお仕えすることをお許しください」
雲婷は両膝をつき、懇願する。
その手に握りしめられていた文を震える手で香月に差し出した。
「……宦官に志願をしたのか」
香月は差し出された文を読み、呆れたようにため息をこぼした。
……愚かな。
宦官は刑罰を受けた男性がなるものだ。自主的に宦官になったとしても、刑罰を受けたのだと誤解され、見下される立場になる。雲嵐はそれを理解していながら、自らの意思で志願したのだろう。
雲嵐もわかっていたはずだ。
玄家に留まり続ければ、道術は使えないとは言え、武術の達人の域に到達できただろう。そうすれば、当主の側近にはなれずとも、紅花の護衛にはなれたかもしれない。
その可能性を投げ捨て、雲嵐は宦官になる道を選んだ。
……氷叡山にいてくれたら、よかったものを。
玄家の一族と門弟が暮らしている李帝国でもっとも過酷な雪山として知られている氷叡山は、香月にとっては懐かしい故郷だ。
李帝国に属するものの、あまりにも過酷な土地に玄家の一族と門弟以外は近づかない。閉ざされた環境は香月にとって心地の良いものだった。
「志願したのならばしかたがない」
香月に止めることはできなかった。
玄家にいた頃ならば、立場を投げ捨ててでも阻止しようとしただろう。
宦官は好ましい存在ではない。
しかし、皇帝以外で男性が後宮に足を踏み入れることが許されている唯一の方法でもある。その為、妃の中には侍女だけではなく、宦官を護衛として雇っている者も少なくはない。
黄藍洙の死により、宦官を雇う者が増えるだろう。
女の花園に放り込まれた宦官は理性を失う者もいる。
しかし、万が一のことが起きれば処罰されて命を奪われるのは、皇帝を裏切った妃ではなく、皇帝の所有物に手を出した宦官だけである。
当然のことながら、皇帝を裏切った妃は冷宮送りになるか、褒美として官吏に下賜される。
それを利用し、悪意をもって宦官を利用する女性もいる。
そのような場所に雲嵐は足を踏み入れることになる。
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