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第二話 玄武宮の賢妃は動じない

06-11.

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「はい。賢妃様。こちらは柳陽紗のものでございます」

 宦官は答えた。

「彼女は侍女長を任されておりました。遺体の損傷も激しかったです」

 宦官は続けて状態を告げる。

 それに対し、香月は眉を潜めた。

 ……侍女に利用されたのか。

 勘付いてはいた。

 しかし、主に忠誠を誓う侍女が主を利用するなど聞いたことがない。少なくとも、玄家ではそのようなことは一度もなかった。

 ……哀れな女性だ。

 同情をしてしまう。

 利用されてでも、俊熙の気を引きたかったのだろう。

「陛下。呪術を使っていたのは二人で間違いありません」

 香月は無言で立っていた俊熙に告げる。

 ……陛下?

 反応がない。

 香月はゆっくりと視線をあげて、俊熙の表情を伺う。

 俊熙は変色をした灰に見覚えがあるような顔をしていた。

「香月」

「はい、陛下」

「呪術を使う者はあのような灰になるのか?」

 俊熙の問いかけに対し、香月は頷いた。

「はい。他人を呪い、他人を疎んだ者は黒く醜い姿になるとされております」

 香月は応える。

 正直に答えることが俊熙の為になると考えていた。

 ……顔色が変わった。

 やはり、なにか心当たりがあったのだろう。

「……そうか」

 俊熙は詳しくは語らなかった。

 しかし、香月の腕を掴む手は力強かった。

「壺に収め、それぞれの家に送り返すように」

 俊熙は指示を下す。

 それに対し、宦官たちは一斉に頭を下げて返事をした。

「香月。玄武宮に戻るぞ」

「はい。陛下。すぐに参ります」

 香月は俊熙に腕を引っ張られながら、その場を後にした。
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