43 / 91
第二話 玄武宮の賢妃は動じない
04-2.
しおりを挟む
何度も杖で殴られた玄武宮の侍女は息はあるものの、痛みで身動きがとれず、逃げられなかった。
その状況を陽紗は冷たい目で見ていた。
他の宮ならば、血相を変えた侍女たちが妃賓を助けに向かうことだろう。敬愛する主人の為ならば命を投げ出すことを厭わないのは、侍女たちにとっては普通のことである。
陽紗は違った。
藍洙に対して敬意を抱いていない。それどころか、情の一つも抱いていない。
悲鳴あげて助けを求められても、それに応えることはない。
「昭媛様。玄賢妃の仕打ちでしょう。侍女の返却をされるべきではないでしょうか」
「そんなことを言っている場合じゃないでしょう!? 早く、この、虫たちをどうにかしてちょうだい!」
「お断りいたします」
陽紗は藍洙を助けるつもりはない。
主人の命令に従わない侍女は陽紗だけではない。昭媛宮の侍女は何人もいるが、誰一人、藍洙の悲鳴を聞き、駆け付けることはなかった。
「蟲毒は呪詛返しの可能性が高い危険な呪術です。呪詛返しに巻き込まれたくはありませんので」
陽紗の言葉を聞き、藍洙の顔色が変わった。
「そんなに危険なものを私にさせたというの!?」
藍洙は香月の推測通り、なにも知らなかった。
「陽紗! 貴女は私に言ったわよね!? これは嫌がらせになる簡単な呪術だって! 誰にもできるものだと言ったじゃないの! 主人に嘘を吐いたというの!?」
虫まみれになっていることを忘れたかのように、藍洙は叫んだ。
それに対し、陽紗は顔色一つ変えなかった。
「なんとか言いなさいよ!」
藍洙は感情の高ぶりを抑えられなかった。
その怒りは、殴られた痛みに耐えることしかできない玄武宮の侍女にも向けられる。
「貴女も私を騙したのでしょう!?」
藍洙は誰も信じられなかった。
藍洙が送っている金品で今まで通りの生活を続けている家族にも頼れず、侍女たちは藍洙を見下しており信用ができない。それならば、他の宮の侍女も同じだろうと決めつけていた。
その状況を陽紗は冷たい目で見ていた。
他の宮ならば、血相を変えた侍女たちが妃賓を助けに向かうことだろう。敬愛する主人の為ならば命を投げ出すことを厭わないのは、侍女たちにとっては普通のことである。
陽紗は違った。
藍洙に対して敬意を抱いていない。それどころか、情の一つも抱いていない。
悲鳴あげて助けを求められても、それに応えることはない。
「昭媛様。玄賢妃の仕打ちでしょう。侍女の返却をされるべきではないでしょうか」
「そんなことを言っている場合じゃないでしょう!? 早く、この、虫たちをどうにかしてちょうだい!」
「お断りいたします」
陽紗は藍洙を助けるつもりはない。
主人の命令に従わない侍女は陽紗だけではない。昭媛宮の侍女は何人もいるが、誰一人、藍洙の悲鳴を聞き、駆け付けることはなかった。
「蟲毒は呪詛返しの可能性が高い危険な呪術です。呪詛返しに巻き込まれたくはありませんので」
陽紗の言葉を聞き、藍洙の顔色が変わった。
「そんなに危険なものを私にさせたというの!?」
藍洙は香月の推測通り、なにも知らなかった。
「陽紗! 貴女は私に言ったわよね!? これは嫌がらせになる簡単な呪術だって! 誰にもできるものだと言ったじゃないの! 主人に嘘を吐いたというの!?」
虫まみれになっていることを忘れたかのように、藍洙は叫んだ。
それに対し、陽紗は顔色一つ変えなかった。
「なんとか言いなさいよ!」
藍洙は感情の高ぶりを抑えられなかった。
その怒りは、殴られた痛みに耐えることしかできない玄武宮の侍女にも向けられる。
「貴女も私を騙したのでしょう!?」
藍洙は誰も信じられなかった。
藍洙が送っている金品で今まで通りの生活を続けている家族にも頼れず、侍女たちは藍洙を見下しており信用ができない。それならば、他の宮の侍女も同じだろうと決めつけていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない
めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」
村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。
戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。
穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。
夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる