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第二話 玄武宮の賢妃は動じない
02-5.
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「どうしてですか」
香月は疑問を素直に口にした。
言葉遣いを崩せと言われたものの、身についた習性は直らない。目上の者に対し、敬語を外して話すなど考えることも許されなかった。
「翠蘭の喪が明けるまでの間だ。さすがに示しがつかん」
俊熙は当然のように答えた。
翠蘭は香月の異母姉だ。兄妹が亡くなった場合、一年は喪に服す習慣がある。
……春鈴の時は喪に服すことさえ許されなかったな。
最初からいなかったことにされた。
玄家ではよくある話だ。内功を得ることができず、気功の扱えない一族は恥であり、その命を天に帰すのが最良である。誰が言い出したのかわからない家訓を忠実に守り、春鈴は五歳の時に命を奪われた。
……翠蘭姉上は喪に服すことが許されるのか。
羨ましいと思ってしまった。
玄家に留まっていたのならば、翠蘭が亡くなったとしても玄家の一族が喪に服すことはなかっただろう。
……姉上は後宮に入って良かったのかもしれない。
後宮に入らなければ翠蘭は生きてはいただろう。
しかし、家名を名乗ることも許されず、当主の血を引いているのにもかかわらず、下女のような扱いを受け続け、母娘でその日暮らしを続けることを考えれば、賢妃の座に座らされたのは幸運だったのかもしれない。
翠蘭がなにを思っていたのか、香月はわからない。
しかし、喪に服すことさえも許されなかった春鈴とは違い、翠蘭の死は弔われている。
「姉が亡くなれば悲しいだろう。一年は喪に服していてもかまわない。後宮入りをしたからと習慣に背く必要はないのだからな」
俊熙の言葉は正しいものだ。
正しいからこそ、香月はなにも言えなくなる。
「そなたは翠蘭と仲が良かったのではないのか?」
俊熙は意外そうな顔をして問いかけた。
兄妹が亡くなった場合、喪に服すのは習慣だ。
玄家のように特殊な家訓がある場合、内密に処理をしてしまうのも珍しくはないのだが、俊熙はそのような家訓を掲げている家門があるということを知らなかった。
武功により権力を手に入れた家門は、内功を扱えない者を一族として認めない。
香月は疑問を素直に口にした。
言葉遣いを崩せと言われたものの、身についた習性は直らない。目上の者に対し、敬語を外して話すなど考えることも許されなかった。
「翠蘭の喪が明けるまでの間だ。さすがに示しがつかん」
俊熙は当然のように答えた。
翠蘭は香月の異母姉だ。兄妹が亡くなった場合、一年は喪に服す習慣がある。
……春鈴の時は喪に服すことさえ許されなかったな。
最初からいなかったことにされた。
玄家ではよくある話だ。内功を得ることができず、気功の扱えない一族は恥であり、その命を天に帰すのが最良である。誰が言い出したのかわからない家訓を忠実に守り、春鈴は五歳の時に命を奪われた。
……翠蘭姉上は喪に服すことが許されるのか。
羨ましいと思ってしまった。
玄家に留まっていたのならば、翠蘭が亡くなったとしても玄家の一族が喪に服すことはなかっただろう。
……姉上は後宮に入って良かったのかもしれない。
後宮に入らなければ翠蘭は生きてはいただろう。
しかし、家名を名乗ることも許されず、当主の血を引いているのにもかかわらず、下女のような扱いを受け続け、母娘でその日暮らしを続けることを考えれば、賢妃の座に座らされたのは幸運だったのかもしれない。
翠蘭がなにを思っていたのか、香月はわからない。
しかし、喪に服すことさえも許されなかった春鈴とは違い、翠蘭の死は弔われている。
「姉が亡くなれば悲しいだろう。一年は喪に服していてもかまわない。後宮入りをしたからと習慣に背く必要はないのだからな」
俊熙の言葉は正しいものだ。
正しいからこそ、香月はなにも言えなくなる。
「そなたは翠蘭と仲が良かったのではないのか?」
俊熙は意外そうな顔をして問いかけた。
兄妹が亡くなった場合、喪に服すのは習慣だ。
玄家のように特殊な家訓がある場合、内密に処理をしてしまうのも珍しくはないのだが、俊熙はそのような家訓を掲げている家門があるということを知らなかった。
武功により権力を手に入れた家門は、内功を扱えない者を一族として認めない。
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