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第0話 悪役侯爵は逆行し、悪役令息に戻る
03-3.
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「問題とは?」
ルイは去年亡くなっている。
王位継承者の争いに巻き込まれることを懸念し、侯爵家に悪影響を与えるというのならば、ルイが適任だ。
だが、既に命を失っているルイのことを言っているとは思えない。
ルイは良き友人だった。
革命が成功していれば、今頃、ルイは幸せになれたのだろうか。
復讐を果たせば、幸せになれると信じていたくせに。
なぜ、数日の命しかなかった俺を助けようとしたのか、理解ができない。
問いただしてやりたいと思うのに。
二度と、俺を助けようなんて愚かなことを考えるなと叱ってやりたいのに。
ルイはもういない。
俺が思い出す前に、ルイは死んでしまった。
それを思い出すだけで、どうしようもない無力感に襲われる。
「やはり、自覚をしていなかったのか」
父上はなにか知っているのだろうか。
そもそも、父上がこんなにも正気を保っていることがおかしい。
酒に溺れて、正気を失っていたはずなのだが。
ルイのこともそうだが、俺の覚えている出来事とあまりにも違っている。
ノエルも記憶があった。
ノエルの言葉を信じたくはないが、俺以外にも記憶を持ったまま、二度目の人生を生きている奴らがいる。
父上がその一人であったとしても、おかしいことはない。
「ヒューバートが自覚をしていないのならば、それでいい。父親である私が対処するべき問題だ。……ずいぶんと遅くはなってしまったが、父親らしいことをさせてくれ」
頭を撫ぜられた。
子どものような扱いだ。
それなのに、振り払えない。
「……ずいぶんとご都合のよろしいことを口になさるのですね」
「そうだな。私もそう思うさ」
「お分かりいただいているのならば、いいのです」
以前、頭を撫ぜられたのはいつだっただろうか。
少なくとも、母上がご存命だった頃のはずだ。
穏やかに笑う父上は昔に戻ったかのようだった。
時が止まればいいのに、と、心の底から思ってしまうほどに穏やかだった。
ルイは去年亡くなっている。
王位継承者の争いに巻き込まれることを懸念し、侯爵家に悪影響を与えるというのならば、ルイが適任だ。
だが、既に命を失っているルイのことを言っているとは思えない。
ルイは良き友人だった。
革命が成功していれば、今頃、ルイは幸せになれたのだろうか。
復讐を果たせば、幸せになれると信じていたくせに。
なぜ、数日の命しかなかった俺を助けようとしたのか、理解ができない。
問いただしてやりたいと思うのに。
二度と、俺を助けようなんて愚かなことを考えるなと叱ってやりたいのに。
ルイはもういない。
俺が思い出す前に、ルイは死んでしまった。
それを思い出すだけで、どうしようもない無力感に襲われる。
「やはり、自覚をしていなかったのか」
父上はなにか知っているのだろうか。
そもそも、父上がこんなにも正気を保っていることがおかしい。
酒に溺れて、正気を失っていたはずなのだが。
ルイのこともそうだが、俺の覚えている出来事とあまりにも違っている。
ノエルも記憶があった。
ノエルの言葉を信じたくはないが、俺以外にも記憶を持ったまま、二度目の人生を生きている奴らがいる。
父上がその一人であったとしても、おかしいことはない。
「ヒューバートが自覚をしていないのならば、それでいい。父親である私が対処するべき問題だ。……ずいぶんと遅くはなってしまったが、父親らしいことをさせてくれ」
頭を撫ぜられた。
子どものような扱いだ。
それなのに、振り払えない。
「……ずいぶんとご都合のよろしいことを口になさるのですね」
「そうだな。私もそう思うさ」
「お分かりいただいているのならば、いいのです」
以前、頭を撫ぜられたのはいつだっただろうか。
少なくとも、母上がご存命だった頃のはずだ。
穏やかに笑う父上は昔に戻ったかのようだった。
時が止まればいいのに、と、心の底から思ってしまうほどに穏やかだった。
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