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第0話 悪役侯爵は逆行し、悪役令息に戻る
03-1.逆行者は諦めない
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「言ったでしょう? 僕の幸せは義兄上が生きていてくださることです」
それが信じられないから、聞いているんだが。
なぜ、俺に執着をするんだ。
理解ができない。
「義兄上に相応しい僕になる為ならば、なんだってすると決めたんですよ」
俺は何も言えなかった。
まるで、俺の返事を期待していないかのような顔をするノエルを引き留めようともしないのに、それでも、ノエルは俺の為ならば何でもするというのだろうか。
* * *
「――ヒューバート」
名を呼ばれて、思わず、振り返ってしまった。
何年ぶりだろうか。
それさえも、思い出せない。
いつもならば、酒に溺れ、社交界に顔を出そうともしない父上が立っている。
しかも、昼間から酒を飲んでいないのだろう。
珍しく、昔のような眼をしていた。
酒に溺れていない時の顔だ。まさか、何年も見ていないのに、すぐに酒を飲んでいないとわかるとは思わなかった。
「……なんですか、父上」
まさか、昼のやり取りで改心したのだろうか?
――いや、ありえない。
あれだけのやり取りで改心をしたというのならば、俺の人生は何にも価値がなかったことになる。
父上が酒に溺れるようになったのは、母上が亡くなったからだ。
母上の死を防げなかった俺のせいだ。
「いや、……こうしてみると、ずいぶんと大きくなったな」
「そう、ですか。あまり、変わらないと思いますが」
隣に並ばれると、なんだか、変な気分になる。
ずっと、いなかったからだろうか。
それとも、父上とまた会えるとは思ってもいなかったからなのか。
父上が死んでしまった時の記憶を取り戻してしまったからなのか。
「ごほん。あー、いまさらではあるが、共に出席をしようと思ってな」
出席? 父上が?
社交界を嫌っているはずの父上が、出席をすると、言ったのか?
それが信じられないから、聞いているんだが。
なぜ、俺に執着をするんだ。
理解ができない。
「義兄上に相応しい僕になる為ならば、なんだってすると決めたんですよ」
俺は何も言えなかった。
まるで、俺の返事を期待していないかのような顔をするノエルを引き留めようともしないのに、それでも、ノエルは俺の為ならば何でもするというのだろうか。
* * *
「――ヒューバート」
名を呼ばれて、思わず、振り返ってしまった。
何年ぶりだろうか。
それさえも、思い出せない。
いつもならば、酒に溺れ、社交界に顔を出そうともしない父上が立っている。
しかも、昼間から酒を飲んでいないのだろう。
珍しく、昔のような眼をしていた。
酒に溺れていない時の顔だ。まさか、何年も見ていないのに、すぐに酒を飲んでいないとわかるとは思わなかった。
「……なんですか、父上」
まさか、昼のやり取りで改心したのだろうか?
――いや、ありえない。
あれだけのやり取りで改心をしたというのならば、俺の人生は何にも価値がなかったことになる。
父上が酒に溺れるようになったのは、母上が亡くなったからだ。
母上の死を防げなかった俺のせいだ。
「いや、……こうしてみると、ずいぶんと大きくなったな」
「そう、ですか。あまり、変わらないと思いますが」
隣に並ばれると、なんだか、変な気分になる。
ずっと、いなかったからだろうか。
それとも、父上とまた会えるとは思ってもいなかったからなのか。
父上が死んでしまった時の記憶を取り戻してしまったからなのか。
「ごほん。あー、いまさらではあるが、共に出席をしようと思ってな」
出席? 父上が?
社交界を嫌っているはずの父上が、出席をすると、言ったのか?
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