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第0話 悪役侯爵は逆行し、悪役令息に戻る

02-23.

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 妄想癖が酷くなったと思いたい。

 そうでなければ、俺は屋敷の外に出ることが危険なのではないか?

「ちなみに、記憶があるのは誰なんだ?」

 シリルならば、大丈夫だろう。

 幼い頃から一緒にいたんだ。

 記憶があったとしても、無害なはずだ。

「第一王子殿下とアランは記憶があると思います」

 第一王子……。

 記憶があったとしても王太子にはなれていないのか。

 いや、そうじゃない。

 死に際まで一緒にいたのはあの男だ。

 覚えているのならば、厄介でしかない。

「義兄上、アランのことは覚えていますか?」

「いや。初めて聞いた名前だ」

 どこかで聞いたような気もする。

 珍しい名前ではないな。

 使用人の中にも同じ名前の者がいるかもしれない。

「義兄上の兄弟子を名乗る方がいらっしゃるでしょう?」

「いるな。二日前に会ったばかりだ」

「お会いしたことは覚えているのに、肝心な名前は忘れているのですか?」

 ……あいつ、元騎士団長か。

 そう言われてみれば、そんな気がしてきた。

 剣術の先生を変えてほしいと父上に強請っていたのにもかかわらず、今回は変えることはできなかったんだよな。そういえば。理由は知らないが。

「興味がなかったからな」

 今後も興味を抱くことはないだろう。

 あいつ――、アランは偉そうになにかと小言を言うから好きじゃない。

「それよりも、シリルやルイが覚えていれば良かったのに」

 シリルが覚えていたのならば、犬の居場所もわかったはずなのに。

 真っ先に名前が出ないということは覚えていないのだろう。

「シリル・アシュリーは覚えていないと思いますよ。義兄上のように急に思い出していなければの話ではありますが」

「そうか。残念だな」

「残念に思うのならば、少しくらいはそれらしい顔をしてください」

 覚えていてほしいことがあるわけでもないのだから、仕方がないだろう。

 覚えていなくとも、シリルが友人であることには変わらないのだから。
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