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第0話 悪役侯爵は逆行し、悪役令息に戻る

02-20.

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「義兄上。お口を開けてください」

「自分で食べれる」

「そう言わずに。僕が義兄上のお世話をしたいのですから」

 無理やりでも口の中に入れそうな勢いで近づけるな。

 ノエルの手を払えば、粥を零すことになる。

 そうなれば、マイルズの過保護が悪化する。

 あの爺さんのことだ。

 執事長の役目を放棄する勢いで俺に付きっ切りになるのは目に見えている。

 それどころか、メイドたちも何かと世話を焼こうとしてくるだろう。

 あいつらは、父上に見放された俺に同情している。

 父上が関わろうとしないのならば、使用人たちの手で育てると言わんばかりの態度だ。

 そういう態度をし続けていたから、侯爵家が落ちぶれても、なかなか離れようとしてくれなかった。

「僕は義兄上の役に立つでしょう?」

 それとこれは話が違う。

「今日のパーティでも義兄上を守り抜いて見せますよ」

 守り抜く?

 この時期はまだ侯爵家の権力は衰えていない。

 敵対関係の貴族は招いていない。

 なにより、招いていない客に侵入を許すような使用人たちではない。

「……なんのことだ」

 前回と状況が変わっているのだろうか。

 俺が思い出したのは今朝だ。だが、その前からノエルは記憶があった。

 些細な変化で招かれる客人の顔ぶれが変わった可能性も否定はできない。

「お粥を食べてくださったら、すべて、お話しします」

 この歳になって、誰かに食べさせられるなんて経験はしたくない。

 だが、何らかの変化があったのならば知らないままではいられない。

「義兄上。僕たち以外にも、記憶を持ったまま、二回目の人生を歩まなくてはならなくなってしまった人はいますよ」

「食べなければ教えないのではなかったのか?」

「詳しいお話は食べていただかないとしません。でも、少しだけ話をすれば義兄上は僕のことを頼らないといけなくなるでしょう?」

 よくも、こんなにも俺の性格を理解しているものだ。

 侯爵家の為ならば、俺は自尊心など簡単に投げ捨てる。

 それを知っているからこそ、ノエルは余裕があるのだろう。
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