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第0話 悪役侯爵は逆行し、悪役令息に戻る
02-18.
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「今まで、疎んできたお前のことを好きになれるとは思えない」
父上は母上のことを愛していなかった。
それなのに、貴族の義務として母上は俺を産んだ。
父上は義母のことを大切にしているのだろう。
それなのに、俺が義母を疎んでも、使用人に嫌がらせを命じても、義母を庇うようなことは一度もしなかった。
親でさえも、他人に対してなんらかの情を抱いているとは思えない環境で育てられたせいだろう。
俺は他人を好きになったことはなかった。
爺さんたち、使用人を家族のように思うことはできる。死ねば涙が止まらないほどには大切にしている。
それは、本来は、家族に向けるような好意だ。
ノエルが俺に抱いているものとは違う好意だということくらいは、わかっている。
「それでも、俺の為ならば、なんでもすると誓えるのか?」
試すような真似をしたいわけではない。
ただ、黙っていられなかった。
見返りとしてでしか俺のことを求められないようなバカなノエルを、少しだけ、揺さぶってやろうと思っただけだ。
「もちろんです。義兄上」
ノエルの目には嘘はない。
欲にはまみれているが。
「だって、僕が義兄上の初恋になれるということでしょう?」
「そんなことは一言も言っていないが」
どうして、理解のできない言葉を聞いたような顔をするんだ。
「初恋を経験済みですか……?」
酷い寒気がした。
ノエルから目を離せない。離した瞬間にろくでもないことが起きるのは、本能的に理解してしまった。
初恋の相手なんていない。
いないはずの相手を探してでも殺しそうな顔をしている。
「そ、んな、相手はいない」
言葉に詰まってしまう。
仕方がないだろう。
こんなに強い殺気を向けられたのは、初めてだ。
体が震えなかっただけでも十分すぎるほどに堪えているんだ。
父上は母上のことを愛していなかった。
それなのに、貴族の義務として母上は俺を産んだ。
父上は義母のことを大切にしているのだろう。
それなのに、俺が義母を疎んでも、使用人に嫌がらせを命じても、義母を庇うようなことは一度もしなかった。
親でさえも、他人に対してなんらかの情を抱いているとは思えない環境で育てられたせいだろう。
俺は他人を好きになったことはなかった。
爺さんたち、使用人を家族のように思うことはできる。死ねば涙が止まらないほどには大切にしている。
それは、本来は、家族に向けるような好意だ。
ノエルが俺に抱いているものとは違う好意だということくらいは、わかっている。
「それでも、俺の為ならば、なんでもすると誓えるのか?」
試すような真似をしたいわけではない。
ただ、黙っていられなかった。
見返りとしてでしか俺のことを求められないようなバカなノエルを、少しだけ、揺さぶってやろうと思っただけだ。
「もちろんです。義兄上」
ノエルの目には嘘はない。
欲にはまみれているが。
「だって、僕が義兄上の初恋になれるということでしょう?」
「そんなことは一言も言っていないが」
どうして、理解のできない言葉を聞いたような顔をするんだ。
「初恋を経験済みですか……?」
酷い寒気がした。
ノエルから目を離せない。離した瞬間にろくでもないことが起きるのは、本能的に理解してしまった。
初恋の相手なんていない。
いないはずの相手を探してでも殺しそうな顔をしている。
「そ、んな、相手はいない」
言葉に詰まってしまう。
仕方がないだろう。
こんなに強い殺気を向けられたのは、初めてだ。
体が震えなかっただけでも十分すぎるほどに堪えているんだ。
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