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第0話 悪役侯爵は逆行し、悪役令息に戻る

02-6.

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「くだらんことを言うような連中とは縁を切れと再三言ってきただろう!」

 そういえば言われたような気がする。

 シリルやルイのことを父上はよく思っていなかった。

 そうか。あれは二人のことを言っていたのか。

 まったく、気づかなかった。

「お前か」

 急に父上が俺から顔を逸らした。

 父上の視線の先にいるのはノエルだ。

「お前がヒューバートに妙なことを吹き込んだんだろう!!」

 どういうことだ。

 どうして、父上はノエルの責任にするんだ。

 俺が勝手に思い込んでいたことなのに。

 誰に言われたわけでもないのに。

 ただ、父上に嫌われていると思っていただけなのに。

「すぐに彼奴の食事を下げろ! 許可をするまで部屋に閉じ込めておけ!」

「だ、旦那様。ノエルはなにもしていませんわ」

「アンナは黙っていろ。アンナの息子だからと目にかけてやったが、息子に悪影響を与えるなら黙ってはいられん!」

 これは止めるべきなんだろうか。

 ノエルは怯えている様子もない。

 取り上げられる前に食べきるつもりなのだろうか。

 物凄い勢いで食べている。

 あんなに勢いよく食べる方法があったとは、知らなかった。

「今すぐ出ていけ!」

 あんなに怒っている父上は初めてだ。

 嫌いな義弟が相手でも、さすがに、これは同情する。

 元々は俺の思い込みのせいだ。

 まさか、こんなことになるとは思ってもいなかった。

「父上。ノエルはなにもしていませんよ」

 死ぬ前なら、口が裂けても言わなかったと思う。

 大嫌いなノエルと食事をしなくていいなら、それ以上に嬉しいことはないと言っていただろうな。

「俺の思い込みでした。ごめんなさい。父上。俺のことが嫌いだから、酒ばかりを飲んでいるのだろうと思っていたんです」

 今度は、父上どころから義母まで言葉が出なくなっている。

 それもそうだろう。俺だって、一度死んでなければ言わなかった。
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