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第0話 悪役侯爵は逆行し、悪役令息に戻る
02-4.
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マイルズを置いて部屋を出る。
そうすれば、当然のように後ろをついて歩く。
それさえも懐かしい。
当然のようにあった足音が懐かしい。
また涙が流れそうになる。
マイルズが生きていただけでこうなると思わなかった。
あれはどうしようもない事故だと諦めていたはずなのに。
「なにをしている。早く席につけ」
父上だ。
父上が生きている。
当然のように俺が食堂に来るのを待っていた。
「ヒューバート。なにを呆けている」
昼間から酒を飲んでいない父上の姿を見るのは、何年ぶりだろうか。
いつもなら、もう酒を飲んでいるのに。
「……いえ。すみません」
いつもの席に座る。
前には義母が座っている。
不思議そうな顔をしている義母の顔を見るだけで息が詰まりそうになる。
その隣にいるノエルの視線が痛い。
すぐにでも飛びついてきそうな視線が怖いくらいだ。
俺には見る勇気がなかった。
「誕生日に謝るな」
前には言われなかったことだ。
「俺の誕生日を覚えていたんですね」
母上が生きていた頃と同じようにするように指示を出しているだけだと思っていた。
父上にとっては侯爵家の権力を見せびらかす場所だけだと思っていた。
それなのに、どうして、父上は驚いているんだろうか?
「バカなことを言うようになったな」
呆れている?
いや、怒っているんだろうか。
「私が息子のことを忘れているとでも思っていたのか」
思っていた。
父上のことを敬愛している。
でも、父上には俺は必要じゃない。
必要じゃないから、死に際にノエルを後継者にしようとしたんだろう。
そうすれば、当然のように後ろをついて歩く。
それさえも懐かしい。
当然のようにあった足音が懐かしい。
また涙が流れそうになる。
マイルズが生きていただけでこうなると思わなかった。
あれはどうしようもない事故だと諦めていたはずなのに。
「なにをしている。早く席につけ」
父上だ。
父上が生きている。
当然のように俺が食堂に来るのを待っていた。
「ヒューバート。なにを呆けている」
昼間から酒を飲んでいない父上の姿を見るのは、何年ぶりだろうか。
いつもなら、もう酒を飲んでいるのに。
「……いえ。すみません」
いつもの席に座る。
前には義母が座っている。
不思議そうな顔をしている義母の顔を見るだけで息が詰まりそうになる。
その隣にいるノエルの視線が痛い。
すぐにでも飛びついてきそうな視線が怖いくらいだ。
俺には見る勇気がなかった。
「誕生日に謝るな」
前には言われなかったことだ。
「俺の誕生日を覚えていたんですね」
母上が生きていた頃と同じようにするように指示を出しているだけだと思っていた。
父上にとっては侯爵家の権力を見せびらかす場所だけだと思っていた。
それなのに、どうして、父上は驚いているんだろうか?
「バカなことを言うようになったな」
呆れている?
いや、怒っているんだろうか。
「私が息子のことを忘れているとでも思っていたのか」
思っていた。
父上のことを敬愛している。
でも、父上には俺は必要じゃない。
必要じゃないから、死に際にノエルを後継者にしようとしたんだろう。
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