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第一話 異母妹は悪役令嬢である

05-19.

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 抵抗すらも許されないのならば、ここで、命を落としてしまった方が幸せなのではないだろうか。

 それが力の抜けていく身体を動かす原動力となったのだろう。

 
 エイダを抱き締めていた腕を解き、数歩、後ろに下がる。

「……暴発しろ」

 呪文を口にしない。

 抑えている魔力を身体の外に流すだけだ。

 それだけで敵は凍り付いていく。

 私たちを囲っている敵兵を倒し、彼女だけでも安全場所へと逃がさなくてはならない。

 これは私の義務だ。

 操り人形ならばそれらしく振舞って死んでいくしかないのだ。

 それなのに身体は限界だというかのように足の力が抜け、その場に座り込んでしまう。

 なんて情けない姿なのだろう。

「あ、ああっ。イザベラ、駄目よ、眼を閉じないで! 私が治すわ。だから、お願い、眼を開けて!!」

 私はここで死ぬのだろう。

 エイダを庇って死ぬのだろう。

 それは決まっていたことなのかもしれない。

 エイダを見殺しにすることもできず、まるで彼女を愛しているかのような言葉を口にしている。

 気味の悪い操り人形だ。

 エイダに対して好意を抱いたことはない。

 彼女はアリアを死に追いやった元凶の一人であり、憎い相手の一人なのだ。

 彼女に向けるのは憎悪と殺意、それ以外にはない。

 追撃をしない敵兵もエイダの魅了の魔法で操作されているのだろうか。

 それとも、抑えることを止めた私の魔力によって氷漬けになったのか。

 今ならば、世界はエイダの為にあるのだと言われても納得できるだろう。

 それほどに矛盾だらけなのだから。

 きっと、私の死後もエイダは好きなように生きるのだろう。

 人々の心を都合のいいように操って笑うのだろう。

「なんで、なんで死んじゃうのよ! イザベラルートだったはずなのに、どうして、ゲームだとヒロインを守るカッコイイ名シーンじゃない! 死んじゃうなんてそんなの知らないわよ! やだ、やだ、そんなの、認めないんだから!!」

 ……なにを言っているのだろうか。
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