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第一話 異母妹は悪役令嬢である

05-17.

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 アイザックには人身御供にでもなるかのような言い方をしたが、私も死にたがりではない。

 皇国の敵は全て凍らせ尽くすつもりなのだ。

 撤退をするまでの時間を稼ぐ。

 それが私に与えられた最後の役目だ。

 着地した途端に斬りかかって来た敵は大剣で吹き飛ばし、そのまま、首を跳ね飛ばす。

 魔族や亜人たちで構成されている帝国の兵士たちとはいえ、首を跳ね飛ばされては動くことはできないだろう。

 皇太子殿下の御身を守ることができれば、私の命など要らない。

 皇国に尽くして得る死ならば誰も文句は言わないだろう。

 今こそ、お前との約束を果たす時だ。

 この身を捧げて皇太子殿下の御身を守るのだ。

 ――だからこそ、今度こそ、罪深い私の手を取ってくれないだろうか。


「イザベラ――!!」

 呼ばれた名に振り返る。

 私の名を叫んだのはエイダだった。

「私も一緒に行くわ!!」

 なぜ、ここにいる。

 結界から落ちるようにエイダは空を飛んでいた。

 正確に表現するのならば、空から落ちていた。

 武装もせずに落ちてくる彼女に対して敵兵が武器を向けないのは、敵意を感じなかったからだろうか。

 それとも殺す価値もないと判断されたのか。

「イザベラ! 私も一緒に戦うわ! 一人で戦わせたりしないんだから!」

 エイダの声は、戦地には似合わない声だった。

 花が咲くような穏やかな声。鈴の音のように安らぎを与える声。

 その愛らしい容姿はまさに花のようだと、詩でも読むかのように謳われている褒め言葉が頭の中を駆け巡る。

 戦場には不似合いな愛らしいドレスに身を包み、負け戦であることを知らない頭の中にはきっと様々な花でもつまっているのだろう。


 ――いっそのことそうだったら良かったのだ。


 戦死者や負傷者が山のように運ばれてくる救護室で、“聖女”の由来となった光属性の魔法を行使しているはずのエイダは私に駆け寄って来る。

 魔法を使っている素振りはなかったというのに、なぜ、彼女は無傷で着地することができたのだろうか。
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