転生した女公爵は婚約破棄された異母妹と暮らしたい。

第一話 異母妹は悪役令嬢である

０５－１４．

「これは私に与えられた名誉の死だ。私は誇りに思うよ」

　ここで大打撃を与えることが出来れば、ここにいる彼らが生き残る可能性が上がる。

　作戦本部が敵の手に落ちれば、城にいる皇帝陛下も敗戦を認めるだろう。

　私の役目はこれ以上の被害が出る前に戦争を終わりへと導くことだ。

「それなら、せめて一人で行こうとするなよ。俺も一緒に行かせてくれ」

「バカ言うなよ。私一人で充分さ。アイザックは皇太子殿下の御身を守り抜かないといけないだろう？」

「それは、他の連中で充分だろ。俺なんかよりも戦闘経験に長けた奴はたくさんいるんだから」

　思い返せば、アイザックとの付き合いは長いものになっていた。

　それを懐かしむ日が来るとは思わなかった。

　いつも一緒にいるのが当然だと思っていたのかもしれない。

「それでも、アイザックは皇太子殿下の傍にいるべきだ」

　死んでほしくない。

　せめて、アイザックだけには生き延びてほしい。

「なんでだよ。なんでお前までそんなことを言うんだ!!」

「感情的になるな、アイザック。長い付き合いの友を全員亡くすわけにはいかないだろう。すべては皇太子殿下の為なんだ。受け入れろ」

「受け入れられるわけがねえだろ!!」

　母親同士が親しい仲だったからこそ引き合わされた仲ではあったが、それは楽しい日々であった。

「お前は感情的になる悪い癖がある」

「今はそんなことを言ってる場合じゃねえだろ！」

「今だからこそ伝えておくんだ。私たちがいなくなった後、皇太子殿下を友人として支えていけるのはアイザックだけになる。それなのに、感情的になってしまうようではやっていけないだろう？」

　性別が違えば友になれないと父には否定された関係ではあったが、その言葉通りにはならなかった。

　まさか、戦場すらも共にするとは思わなかったが、彼こそは私の唯一の親友であると誇ることができる。

「可能な限り、時間を稼ごう。アイザックは撤退を指示するんだ」

　死んでほしくない。

　だからこそ、彼を一緒に連れて行くわけにはいかない。

「これは私の役目だよ」

　私の我儘だ。