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第一話 異母妹は悪役令嬢である

05-13.

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 負け戦に参戦すると分かっていながらも帰りを待っている屋敷にいる皆、領民たち、それから最後になると分かっていながらも会う前に逃げてしまった父たちも、それを望んでいるのかもしれない。

 わかっている。
 だからこそ、死に場所として選んだのだから。

 私は最初から生き延びるつもりなどなかった。

「……アイザックだけでも逃げてくれたら、良かったのに」

 逃げて帰っても仕方がない事態に陥っている。

 実際、身分を盾にして逃げた騎士や臨時軍隊の軍人も少なくはない。

「そうすれば、私は迷うことなく飛び込めたのに」

 誰も死にたくないのだ。

 終戦後、逃げ出した者たちにはなんらかの処罰が下るだろう。

 それでも勝ち目のない戦場で命を落とすよりも軽い刑罰で済むだろう。

 それでも私は逃げるわけにはいかない。

 二度と見殺しにしたくはないのだ。

 それが顔も知らない人であっても、私の行動により命が救われる者がいるのならばそれでいい。

「なあ、それ以外の方法はねえのかよ。お前、どうしようもねえバカだから、作戦を練り直した方が良いんじゃねえのか。公爵のお前が死ぬようなことをする必要ねえだろ。もう一度、考え直そうぜ」

「作戦を練り直している時間はないさ。今にもマーヴィンの結界が崩壊しそうだ。目の前の敵兵がそのまま流れ込んで来れば、作戦本部は壊滅を免れない」

「そのくらい俺だってわかってる。彼奴が命を賭けてまで手に入れた最高の機会を無駄にするわけにはいかねえってことも、わかってる。それでも――」

「そこまで分かっているなら充分だろう」

 捨て身の必要はない。だが、あの数の敵兵を相手にすれば命の保証はない。

 ……ロイに頼んであるアマリリスの花は屋敷に届いただろうか。時季外れの花を手に入れるのは難航するだろう。

 戦時中だ。

 取引をしてくれる国も少ないのを忘れていた。

 それでも、きっと、どうにかして手に入れてくれることだろう。

「アイザック。これは最後の機会なんだよ。わかってくれるだろう? それを最大限に生かすことができるのは私だけだ。皇太子殿下も理解した上での命令を下されたのだろう」

 これは友であるマーヴィンが紡ぎあげた奇跡だ。

 皇国に残された最後の機会だ。
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