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第一話 異母妹は悪役令嬢である

05-11.

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「安心できねえ状態なのは変わらねえけどなぁ。はは、どうするよ。イザベラ。このままだと全滅するだろ」

「縁起でもないことを口にするな。誰が聞いているかわからないだろう」

 戦況は最悪だ。

 レイハイム帝国は次から次へと増員していくのにもかかわらず、皇国は死傷者の数が増えていくだけだ。

「この期に及んでも希望を捨ててねえのかよ?」

「捨てるわけにはいかないだろう。私はスプリングフィールド公爵として参戦をしているんだ。臨時の部隊長とはいえ、示しがつかないだろう?」

「イザベラらしい言い分だな。この状況でもお前の部下が諦めねえわけだ」

「私のことは言えないだろう。アイザック。皇太子殿下の御身を連れ帰ってくることができたのはお前の采配があってこその成果だ。誇るべきだと思うよ」

 エイダを庇った皇太子殿下が敵に敗れたと聞いた時は、この身を投げ打ってでもエイダを殺すべきではないかと思ったものだ。

 彼女さえいなければ皇太子殿下は致命傷を負わずにすんだのではないかと思ってしまうのだ。

「そりゃどうも。自分可愛さに生き残ったと言わねえのかよ」

「この戦場下でさえなければ、敵に背を向けるのは皇国貴族にあらずと怒鳴り散らしたことだろうな」

「はは、ごもっともだ」

 しかし、皇太子殿下の意識が戻ったのならばそれでいい。

 エイダの持つ光属性の魔法は使い道がある。

 戦場下では生きている限りは命を救うことができる奇跡の力は、まだまだ必要となるだろう。

「冗談を言っている場合じゃねえよなぁ」

「冗談でも口にしなければ逃げ出しているところだろう?」

 もしも、神様がこの戦を見守っているというのならば、皇太子殿下が戦場復帰をする前に勝敗がつくことを望むのだが、そうはいかないだろう。

 現実はいつも厳しいものだ。

 それを受け入れないわけにはいかない。

「そりゃそうだ。あの大軍を前に生き残れるとは思えねえよ。マーヴィンの発動阻害魔方陣の効力がある間に逃走する準備を整えるべきだな」

「誰もが同じことを思っているだろう。だが、問題は時間がないことだ。殿下たちが逃げられるように時間を稼ぐ必要があるだろう」

 目前に広がっている敵兵を見る。

 あの大軍に攻められた時には全滅は免れないだろう。
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