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第一話 異母妹は悪役令嬢である

05-6.

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 それでも私が濡れないように傘を差し続けている姿はなんておかしなものだろう。

 思うことは幾つもある。

 それでもアリアに対してなんらかの感情を抱くことさえ、私には許されていないだろう。

 彼女の命を守る努力をしなかった。

 命令された通りにしか動くことができなかった。

 心の中ではどうにかアリアを奪還しようと企んでいても、それでも、私は動くことができなかった。

 思い返せば、操り人形になったかのような気分だった。

 例えば、心の中で思っている言葉と口から出てくる言葉が違うような気分に陥ることは多々あった。

 思うように身体が動かない。肝心な時には金縛りにあったかのように動けなくなっていたようだった。

 見えない糸で吊し上げられ、誰かの都合のいいように動かされている。

 そのような気分だった。
 それは都合がよすぎる言い訳だということは分かっている。それは言い訳だ。


「……アリア」

 その名を呼ぶ機会は少なくなっていた。

 学院に入学してからは彼女の行為を批判する時にしか口にしなかった。

 決してその名を口にすることは罪ではないのにもかかわらず、私は、その名を呼ばなかった。

 もしも、名を呼んでいれば変わったのだろうか。

 叱責ではなく幼少期のようにアリアへの愛情を込めて呼んでいれば、彼女は罪を背負わずにいたのではないだろうか。

「私の愛しい異母妹。私の生きがいだった可愛いアリア。……今なら、こうして、簡単に口に出せるのに。肝心のお前がいないのでは意味がないではないか」

 それを考えるのは無駄な行為だと理解をしている。

「帰ってきてくれ。アリア。私を置いて逝かないで」

 彼女が生き返ることはない。

 私に笑いかけることはありえないのだから。

 わかっている。それでも、泣き言を口にしてしまう。

「私はお前の異母姉である資格はないだろう。異母妹よりも彼女を選んだ皇太子殿下を諫めなかった。あの場で諫めることができたのは公爵である私だけだったというのに、我が身の可愛さにお前を見捨てたのだ」

 悲しくないわけではない。怒りを感じないわけではない。
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