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第一話 異母妹は悪役令嬢である

05-5.

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 神に祈りを捧げ、神に感謝をしていた。

「それなのに、あの子を送る言葉の一つさえも口にしない連中だ」

 教会が企画するだけの意味のない奉仕作業ですらアリアは嬉しそうに行っていた。

 領民に紛れて笑うアリアを見たことのある者も少なくはないはずだ。

 アリアは善良な人ではなかったのだろう。

 婚約者だったローレンス皇太子殿下もよく思っていなかった。

 私だってアリアを煩わしいと感じたことはある。

 公爵家の身分を悪用していたと言われても仕方がないことだってしてきた。それでも、それが許される立場だったのだ。

「私は、聖書を片手にしていなければ、鎮魂の祈りすら読み上げることはできないのだよ。お世辞でも熱心な信徒とは言えないだろう」

 少なくとも教会はそれを認めるべきだろう。

 熱心な信徒の一人として受け入れるべきだった。

 死刑に処された者であっても信徒であれば教会は弔うことができる。それは皇国の歴史上でも何度も繰り返されてきたことだ。

「異端審問にかけられるべきは私だよ」

 心で感じているものに従えというのならば、私は墓を掘り返すだろう。

 手にしている全ての物事を投げ捨て、私を支えてくれる者たちの手を振り払い、私を必要としてくれている者たちを見捨ててしまうだろう。

「ろくでもないことばかりを考えてしまう」

 冷たい土の下で眠るアリアの眠りを妨げるだろう。

 異形でも構わない、罪深き姿でも構わない。

「なあ、セバスチャン。私は公爵として正しい選択をしたのだろう」

 誰も望んでいないと分かっていながらも、失った命の代わりとなってしまう膨大な魔力を注ぎ込んでしまうだろう。

 皇国の領土でも目撃されたことがあるゾンビとしてこの世に引き留めようとしてしまうだろう。

「そして、お前の言う通りに心に従って行動を起こせば、人として犯してはならない罪に手を染めることだろう。それを理解しているのだ」

 ゾンビには心臓も心もない。記憶も自我もない。

 それでも私はアリアの眠りを妨げてしまうだろう。

「それならば、行動には示さず言葉にされてみてはいかがでしょうか」

 セバスチャンの顔を見なくても分かる。

 なにも聞こえない、なにも見えていないと言わんばかりに眼を閉じているのだろう。
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