転生した女公爵は婚約破棄された異母妹と暮らしたい。

佐倉海斗

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第一話 異母妹は悪役令嬢である

04-7.

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「……やあ、処刑人諸君。言いつけ通りのお仕事をしてくれたようだね。仕事が終わった途端に申し訳ないが、彼女の顔を拝見させて頂きたくてね」

 後ろではすっかり怯えた民衆が血も涙もないと口にするのが聞こえた。

 あぁ、そうだ。血も涙もないさ。

 そんなものを流したところで、アリアを死の淵に追いやったのは私なのだ。

「皇族侮辱罪を犯した愚かな彼女の死に様は、実に、くだらないものであっただろう?」

 アリアを捨てた皇太子殿下を恨もうと、二人の婚約を台無しにしたエイダを恨もうと意味がないのは分かっている。

「涙を流しもしない彼女の首を斬り落とした諸君らには分からないだろうが」

 こうなってしまったのは私の浅はかな行動によるものだ。

 アリアを見殺しにしたのは私だ。

 それなのに彼女の遺言を果たす為には命を絶つこともできない。

 それ以上に意味がないことはしたくはない。

「冤罪だとわかっていながらも殺された気分はどうだい?」

 なにより、こんなに冷たい場所にアリアを一人でいさせたくはない。

「私を恨んでいることだと思って見に来たんだよ。アリア」

 処刑人が怯えながらも両手で持ち上げたアリアの顔を見る。

 顔と身体が切り離されたと言うのにもかかわらず、彼女の顔はまるで役目から解放されたとでもいうように幸せそうだった。


「……お前の顔を見れば恨めるかと思えば、見当違いだったようだ。そんな顔をされていては恨むのにも恨めないだろう」

 それでも、眼を閉じられているのは恐怖からだと思わせてほしい。

 強がっていても怖かったのだろう。

 恐ろしかったことだろう。そう思わせてほしい。

 死を望んでいたわけではないのだと思わせてほしい。

「お前はそれでよかったのか。バカな子だ」

 そのような願いを抱いてしまうほどに穏やかな顔だった。

 一瞬で斬り落とされた首に生じる激痛を感じる前に命を落とすことができたのだろうか。

 まるで、このようなことになると分かっていたのではないかと思ってしまうくらいに幸せそうに眼を閉じていた。

 どうして、死を間近に感じながらも穏やかな顔をしていたのだろうか。

「処刑人諸君。悪いが、彼女の頭と胴体を棺に入れてくれ」

「は、はい。埋葬場所はどういたしましょうか……?」

「彼女は身分をはく奪をしたとはいえ、先日までスプリングフィールド公爵家の令嬢だった。その遺体は私が引き取ろう」

 彼女はね。私のたった一人の異母妹なのだよ。

 誰にも聞こえないような小さな声で言ったつもりだったが、処刑人には聞こえたのだろう。

 すぐに準備をすると言ってあの子の頭を抱えながら、背を向けた。
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