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第一話 異母妹は悪役令嬢である
04-4.
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「ねえ、エイダの楽しそうな顔を見てよ」
「それを見てどうしろと言うのだ」
「別に? 僕はただエイダが殿下の隣にいて笑っている姿が微笑ましいと思っているだけだよ。お似合いだと思わない?」
思えるわけがないだろう。
あの場にいるべきなのはアリアだった。
それを奪い、幸せにしている姿など見たくもない。
「エイダが幸せなら、彼女は死ぬべきだよ」
マーヴィンのことが理解できない。
それが正しいことだと思えない。
それなのに、声に出して否定することさえもできなかった。
「ほら、見てごらんよ。幸せそうだから」
マーヴィンに言われた通り見てみれば、皇太子殿下に寄り添いながらエイダは笑っている。
最初から皇太子殿下の隣は自分のものだったのだというかのような顔をしている。嬉しそうにその視線を処刑台に向けている。
「もうじき、悪女の首が撥ねられるよ」
そんなに私の異母妹が殺されることが嬉しいのか。
アリアが恥を晒す姿を見るのがそんなに嬉しいのか。
両腕を摑むアイザックとマーヴィンを振り払って、エイダ嬢に殴り掛かるくらいは許されるのではないだろうか。
そのようなことを思っても身体が動かない。
まるで、アリアの処刑を見届けることしか許されていないかのようだった。
「言い残すことはあるか?」
処刑人の感情のない声が聞こえる。
マーヴィンの言葉に言い返すこともせずに私はそちらを見る。
処刑台に頭を乗せられ、頭上にある鋭い刃が落ちるのを待つだけの姿勢にさせられているアリアの最後の言葉になるだろう。
「いいえ。なにもございませんわ」
その言葉が合図だったかのように刃が落ちる。
アリアの処刑は執行された。
「アリア……」
呆気なかった。
あの愛らしい顔に涙を見せることもなく、世間の期待通りに悪役令嬢を演じて見せたアリアの首が落ちる。
「それを見てどうしろと言うのだ」
「別に? 僕はただエイダが殿下の隣にいて笑っている姿が微笑ましいと思っているだけだよ。お似合いだと思わない?」
思えるわけがないだろう。
あの場にいるべきなのはアリアだった。
それを奪い、幸せにしている姿など見たくもない。
「エイダが幸せなら、彼女は死ぬべきだよ」
マーヴィンのことが理解できない。
それが正しいことだと思えない。
それなのに、声に出して否定することさえもできなかった。
「ほら、見てごらんよ。幸せそうだから」
マーヴィンに言われた通り見てみれば、皇太子殿下に寄り添いながらエイダは笑っている。
最初から皇太子殿下の隣は自分のものだったのだというかのような顔をしている。嬉しそうにその視線を処刑台に向けている。
「もうじき、悪女の首が撥ねられるよ」
そんなに私の異母妹が殺されることが嬉しいのか。
アリアが恥を晒す姿を見るのがそんなに嬉しいのか。
両腕を摑むアイザックとマーヴィンを振り払って、エイダ嬢に殴り掛かるくらいは許されるのではないだろうか。
そのようなことを思っても身体が動かない。
まるで、アリアの処刑を見届けることしか許されていないかのようだった。
「言い残すことはあるか?」
処刑人の感情のない声が聞こえる。
マーヴィンの言葉に言い返すこともせずに私はそちらを見る。
処刑台に頭を乗せられ、頭上にある鋭い刃が落ちるのを待つだけの姿勢にさせられているアリアの最後の言葉になるだろう。
「いいえ。なにもございませんわ」
その言葉が合図だったかのように刃が落ちる。
アリアの処刑は執行された。
「アリア……」
呆気なかった。
あの愛らしい顔に涙を見せることもなく、世間の期待通りに悪役令嬢を演じて見せたアリアの首が落ちる。
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