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第一話 異母妹は悪役令嬢である

03-8.

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「わたくしは身分違いの恋をしてしまいましたの。お姉様、これはどうすることもできないことなのですわ」

 あの子の目に映る景色を知りたい私へ語る姿は、あの頃と同じだった。

 楽しかったこと、面白かったこと、悲しかったこと、辛かったこと、感じた物事の全てを共有するかのように語るあの子の話が好きだった。

 私の知らない世界を知っているあの子の話が楽しみだった。

 いつの日か、二人で色々な世界を見て回ろうと叶うことのない約束を交わしたことを思い出す。

「わたくし、お父様にもお母様にも愛されてはいなかったのですわ」

 違う。

 アリアは大切にされていた。

 愛されていた。

 私とは違って誰からも愛されていて、必要とされていた。

「わたくし、本当に要らない子でしたのね」

 なぜ、今、思い出したのだろう。

 何年も忘れていた。きっと彼女も覚えてはいないだろう。

 私はアリアに救われたのに。

 アリアがいてくれたからこそ、私は、生きようと思えたのに。

 それさえも忘れてしまっていた。

「だからこそ、公開処刑なんか怖くはありませんのよ。だって、わたくしを愛してくれる人のいない世界なんて生きていても辛いだけですもの」

「そんなことはない。父上も義母さんもお前のことを大切にしていた」

 その言葉を信じられないのだろう。

 面会を拒絶したのではない。来ることさえもできないだけだ。

「冷たいふりをしてお優しい人」

 アリアは私に手を伸ばした。

 私が掴んだままの鉄格子にも届かない。

「わたくしね、本当はお姉様とはずっと仲良くしていたかったのですよ」

 幻を掴むかのような素振りをしたアリアは諦めたかのように腕を降ろした。

「でも、わたくしとは流れている血が違いますもの。手を伸ばすことは罪になると何度もお父様に叱られてきましたの」

 私はそれを見ているだけだ。

 その手を掴むことさえもできない。

「……私もアリアと仲良くしたかったさ」

 振り絞った声は情けないものだった。

 言葉にはすることができるのに行動が移せない。
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