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第一話 異母妹は悪役令嬢である
03-4.
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ただ、家族から見捨てられたわけではないと知っていてほしかった。
アリアは家族に愛されていた。
それだけは変えようのない事実だから。
「お姉様は変わらないのですわね」
アリアは穏やかな顔をしていた。
「わたくしが大好きなお姉様のままですわ」
大好きだと言われて嬉しいはずなのに、胸が痛くして仕方がない。
「おかしな話ですわ。お姉様、お姉様はわたくしのことを嫌いになられたとばかり思っていましたのに」
学院では何度も目にしていた恥を晒すだけの無様な姿こそが偽りであったのではないか。
「わたくし、お姉様と最後に言葉を交わすことができて幸せですわ」
いや、世間の目がそれを悪と評しても、婚約者がエイダ嬢に現を抜かしている状況を見て見ぬふりをすることなどできるはずがない。
「それも、きっと、あの女が仕組んだことなのですわね。そういうことにしてしまいましょう。全ての責任は身分を弁えない常識知らずのあの女が悪いのですわ。お姉様も、そうしてしまいましょうよ」
愛した人の心を取り戻す為に必死だったのだろう。
そう思えて仕方がない。
「必死な言い訳だな」
責任転換をしてしまえば気持ちが楽になるのだろうか。
自分の中に理由を探し続けるよりは苦痛は和らぐのだろうか。
「死を宣告されたというのに、お前は変わらないのか」
「ええ。死を受け入れても変わることはありませんわ。わたくしはわたくしです。他の誰でもございませんから」
「本当にそれでいいのか。足搔く必要もないと言うのか」
「構いませんのよ。ローレンス様に愛されないのならば、この世界に未練はございません」
本人の意思を確認されることなく、結ばされた婚約だ。
「ですから、お姉様、わたくしのことはお気になさらないでください」
大人に利用されただけだ。
利用価値が薄れたと判断すれば、簡単に切り捨てられる。
「わたくしのことを嫌いなままでいてくださいませ」
それだけの関係だった。
それなのにもかかわらず、なぜ、想い続けていられるのだろうか。
アリアは家族に愛されていた。
それだけは変えようのない事実だから。
「お姉様は変わらないのですわね」
アリアは穏やかな顔をしていた。
「わたくしが大好きなお姉様のままですわ」
大好きだと言われて嬉しいはずなのに、胸が痛くして仕方がない。
「おかしな話ですわ。お姉様、お姉様はわたくしのことを嫌いになられたとばかり思っていましたのに」
学院では何度も目にしていた恥を晒すだけの無様な姿こそが偽りであったのではないか。
「わたくし、お姉様と最後に言葉を交わすことができて幸せですわ」
いや、世間の目がそれを悪と評しても、婚約者がエイダ嬢に現を抜かしている状況を見て見ぬふりをすることなどできるはずがない。
「それも、きっと、あの女が仕組んだことなのですわね。そういうことにしてしまいましょう。全ての責任は身分を弁えない常識知らずのあの女が悪いのですわ。お姉様も、そうしてしまいましょうよ」
愛した人の心を取り戻す為に必死だったのだろう。
そう思えて仕方がない。
「必死な言い訳だな」
責任転換をしてしまえば気持ちが楽になるのだろうか。
自分の中に理由を探し続けるよりは苦痛は和らぐのだろうか。
「死を宣告されたというのに、お前は変わらないのか」
「ええ。死を受け入れても変わることはありませんわ。わたくしはわたくしです。他の誰でもございませんから」
「本当にそれでいいのか。足搔く必要もないと言うのか」
「構いませんのよ。ローレンス様に愛されないのならば、この世界に未練はございません」
本人の意思を確認されることなく、結ばされた婚約だ。
「ですから、お姉様、わたくしのことはお気になさらないでください」
大人に利用されただけだ。
利用価値が薄れたと判断すれば、簡単に切り捨てられる。
「わたくしのことを嫌いなままでいてくださいませ」
それだけの関係だった。
それなのにもかかわらず、なぜ、想い続けていられるのだろうか。
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