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第一話 異母妹は悪役令嬢である
02-6.
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「わたくしはなにもしておりませんわ! どうか、信じてくださいませっ」
「その口を閉じろ。皇太子殿下の御前だ!」
「触らないでくださいませ! わたくしはスプリングフィールド公爵家の娘ですわ!」
抵抗をしている声は必死だった。
その声に応えなければならない。
わかっているのに身体が動かない。声が出ない。
「お姉様!!」
義母の都合の良い人形となったあの子は嫌いだった。
あの子の義母と同じ黒髪が憎いと思った。
父譲りの私と同じ青色の眼は少しだけ好きだった。
泣いている姿が嫌いだった。
笑っている姿を私の前で見せることは許されなかった。
義母の言いつけを守るあの子が大嫌いだった。
あの子は、亡き母を貶めたあの女の子どもだ。
あの子は、亡き母を裏切ったあの男の子どもだ。
「……皇太子殿下。発言をお許しいただけますか?」
「いいだろう。言ってみろ」
「ありがとうございます」
それならば、少しくらいは痛い目に遭うべきだ。
そうすれば、命だけは救われるのだから。
「アリア・スプリングフィールドはこの場を持ってその身分を剝奪します。後ほど、正式な書類を皇帝陛下に提出させていただくとしましょう」
これは結果としてあの子の為になる。
「皇太子殿下の婚約者として相応しくないのならば、元公爵代理の娘を保護する必要性は感じられません」
「はっ、正しい判断だな」
公爵令嬢の身分がなくなれば、公開処刑はされないだろう。
元より公開処刑される重罪を犯していないのだ。それならば、身分剥奪により市民階級に叩き落とされたというだけで世間は同情することだろう。
アリアが死なずにすむのならば、それでいいではないか。
世間が静まった頃、父と義母の元にでも送り届け、静かに暮らしていてもいいだろう。それでも世間の目が厳しいのならば、私が匿い続ければいい。
これは、アリアを守る為になるのだ。
アリアを救わなくてはいけない。アリアは死んではいけない。
そう思っているのに、どうして、身体が思うように動いてくれないんだ。
「貴女はこの場をもってスプリングフィールド公爵令嬢ではなく、ただのアリアだ。市民階級の者として皇族へ敬意を忘れずに生きるといい。……それで構いませんか、皇太子殿下」
「そうだな。良いだろう。この女を地下牢へ連れて行け」
相変わらず、皇太子殿下の腕に纏わりついているエイダ嬢の頭を撫でながら、皇太子殿下は従者に告げた。
身分剝奪は想定外だったのだろうか、あの子は涙を流しながら従者に連れられて行った。その後は何事もなかったかのように祝宴が再開されたのだった。
「その口を閉じろ。皇太子殿下の御前だ!」
「触らないでくださいませ! わたくしはスプリングフィールド公爵家の娘ですわ!」
抵抗をしている声は必死だった。
その声に応えなければならない。
わかっているのに身体が動かない。声が出ない。
「お姉様!!」
義母の都合の良い人形となったあの子は嫌いだった。
あの子の義母と同じ黒髪が憎いと思った。
父譲りの私と同じ青色の眼は少しだけ好きだった。
泣いている姿が嫌いだった。
笑っている姿を私の前で見せることは許されなかった。
義母の言いつけを守るあの子が大嫌いだった。
あの子は、亡き母を貶めたあの女の子どもだ。
あの子は、亡き母を裏切ったあの男の子どもだ。
「……皇太子殿下。発言をお許しいただけますか?」
「いいだろう。言ってみろ」
「ありがとうございます」
それならば、少しくらいは痛い目に遭うべきだ。
そうすれば、命だけは救われるのだから。
「アリア・スプリングフィールドはこの場を持ってその身分を剝奪します。後ほど、正式な書類を皇帝陛下に提出させていただくとしましょう」
これは結果としてあの子の為になる。
「皇太子殿下の婚約者として相応しくないのならば、元公爵代理の娘を保護する必要性は感じられません」
「はっ、正しい判断だな」
公爵令嬢の身分がなくなれば、公開処刑はされないだろう。
元より公開処刑される重罪を犯していないのだ。それならば、身分剥奪により市民階級に叩き落とされたというだけで世間は同情することだろう。
アリアが死なずにすむのならば、それでいいではないか。
世間が静まった頃、父と義母の元にでも送り届け、静かに暮らしていてもいいだろう。それでも世間の目が厳しいのならば、私が匿い続ければいい。
これは、アリアを守る為になるのだ。
アリアを救わなくてはいけない。アリアは死んではいけない。
そう思っているのに、どうして、身体が思うように動いてくれないんだ。
「貴女はこの場をもってスプリングフィールド公爵令嬢ではなく、ただのアリアだ。市民階級の者として皇族へ敬意を忘れずに生きるといい。……それで構いませんか、皇太子殿下」
「そうだな。良いだろう。この女を地下牢へ連れて行け」
相変わらず、皇太子殿下の腕に纏わりついているエイダ嬢の頭を撫でながら、皇太子殿下は従者に告げた。
身分剝奪は想定外だったのだろうか、あの子は涙を流しながら従者に連れられて行った。その後は何事もなかったかのように祝宴が再開されたのだった。
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