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第一話 異母妹は悪役令嬢である

01-7.

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 公爵として最後に出来る仕事はそれくらいだ。

「そんな泣きそうな顔をして見送らないでくれよ。ロイ。私の代わりにあの子の墓守を頼めなくなるだろう?」

 あの子の墓の手前、皇国の勝利を盛大に祝おうなどと戯言を口にしたが、それは叶うことはないだろう。

「戦場は私がもっとも輝く場所だ。化け物には相応しい舞台になることだろう」

 今回の戦はどう考えても負け戦だ。

 亜人や魔族の少ない皇国では、魔力や腕力が桁違いにある亜人や魔族たちの王国、レイハイム帝国に勝てない。

 何より、知能のない野生動物である魔物たちを狩って暮らしている者たちが多いといわれているレイハイム帝国に対し、皇国の騎士団は滅多なことでは魔物を狩ることはしない。

「スプリングフィールド領の怪物公爵が英雄と呼ばれることになるとは、母上も思いもしなかったことだろう」

「そのような忌々しい二つ名を名乗るのはお止めくださいませ、公爵閣下。貴女は誰よりも優しい心を持った女性なのだということを私たちは存じ上げております」

「そのようなことを言うのはお前たちくらいだよ」

 感情のままに振る舞えば、領地は氷漬けになる。

 すべてを凍りつくしても私の魔力は尽きない。三年前から魔力は増え続け、少しの油断が領民を危険に晒すことになる。

 恐怖の象徴であると言わんばかりに付けられた二つ名が怪物公爵。

 三年前までは怪物の公爵令嬢と呼ばれていたのだから、大した変化はない。

「世間は怪物公爵の出番だと噂をしている。それならば、その噂に応えるのが公爵の義務だろう?」

 危険を伴う魔物討伐は全て冒険者組合に丸投げしており、騎士団の主な仕事は鍛錬と事務仕事と皇族の護衛である。

 中には魔物討伐を任される部隊もあると聞いているが、それでも、とてもレイハイム帝国に勝つ戦力には足りない。

 負け戦だ。

 それをわかっているからこそ、私は死地に向かうのだ。

「皇帝陛下は帝国の滅亡を望んでいる。あの方の願いならば仕方がない」

 一体、皇帝陛下の御身になにが起きたのか分からない。

 幼い頃にお会いした時は温厚な平和主義者だったはずだ。今では平和主義とは程遠い暴君として君臨されている。
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