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第一話 異母妹は悪役令嬢である

01-5.

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「三年の月日は退屈なものだった。お前がいない世界というのは色のないものだったのだと、失ってから気が付いたよ」

 忘れていたことがある。

「アリア、私はお前のことを大切にしていたはずだったのに」

 様々な感情すらもアリアが私に教えてくれたのだ。

 誰かを大切に思う心もアリアが教えてくれたのだ。

「お前が教えてくれたものを手放してしまった私には何も残っていない。それが残念で仕方がないよ」

 それは、父も母も教えてはくれなかったことだった。

 公爵家を継ぐ私には不要なものだと、感情を切り捨てるよう教えてきた両親とは違って、アリアはその大切なものを教えてくれた。

「アリア」

 それを忘れていた。

 結局、それを教えてくれたアリアさえも、私を見ようとしなくなった。

「お前が死んでしまってからすべてを思い出した」

 だからこそ私もアリアとの日々を忘れてしまうようにした。

 思い出せば、戻れない日々に縋る弱い自分になってしまう気がして、心の奥底に隠したのだ。

 それが間違いだったのだろう。

「家族に対する愛情は無価値なものだと、公爵には必要がないものだという母の教えに縋るようにしていても、世界には色があった。それは、お前が生きていたからなのだろう。お前を失ってわかったことだ」

 それはアリアを冷たい土の中に眠らせた日だった。

 忘れることのできない忌々しい日だった。

「私にとってアリアは全てだった。たった一人の異母妹だった」

 私は、アリアに生きていてほしかったのだと誰にも言うことができない本音を零した日にようやく思い出した。

 私の代わりに空が泣いてくれたのだと思えば、少しだけ楽になった。

 それが現実逃避なのだと指摘する人がいないことだけは寂しかった。

「愚かな願望に執着する私を見ていれば、お前は笑ってくれるか? 死に際にお前に告げられた夢物語を願わずにはいられないのだ」

 そうやって言い訳をして生きていく日々に対して何も感じなくなるのは仕方がないことだったのかもしれない。そうするしかできなかった。

 それでも、私はアリアに幸せになってほしかった。

 生きていてほしかった。

 市民階級に落とされた相手に対し、刑罰はないだろう。
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