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第一話 異母妹は悪役令嬢である

01-4.

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「どうか、笑っていてくれ。アリア」

 それは冗談ではなく、本当のことなのかもしれない。

 私もこうしてアリアの面影を追いかける日々を過ごすことになるとは、思ってもいなかった。

「お前を死なせた事実は変わらない。私はそれを背負い続ける覚悟だ」

 あの日、私は彼女のことを疎ましく思い、その手を払い除けたのだ。

 スプリングフィールド公爵家の当主としての浅はかな判断を彼女に言い放った。それは一時的な気の迷いと釈明することも許されない。

 私の愚かな判断がアリアの命を奪ったことには変わりない。

 言うつもりもなかった言葉を口にした事実は消えない。

「だから、許しを乞うつもりはないよ」

 あれは確かに私の意思であった。

 そうすることが正しいのだと狂った感情を抱いていた。

「アリア。愚かな私を恨め。罪のない異母妹を庇わなかった私を憎め。墓参りなどをしてもなにも変わらないのだと罵声でも浴びせればいいだろう」

 叶うはずもないのは知っている。

 三年前に死んだアリアが言葉を発せるわけがない。

「それすらも出来ないのは、私のせいだったな。私がお前を見殺しにしたからだ。それなのに、私は、……なんて情けないことだろう」

 スプリングフィールド公爵家には相応しくない人間だと言い放ち、その身分を剝奪した。

 その行為があの子を追い詰めることになるとは知らず、世間の噂が消えた頃にでも修道院に送ってやろうと思っていた。

 バカなことをした。

 そうする暇があるのならば、アリアの腕を掴んで逃げ出せばよかった。

「言葉が足りなかったと自覚をしたのは全てが終わった後だったよ」

 それまでに犯した罪の数々を償う心が芽生えたのならば、密かに手に入れた隠れ家で養ってもいいと思っていた。

「私が間違っていた」

 あの子に相応しい相手を探し出し、人並みの幸せを享受させてやることくらいはできるだろうと思っていた。

「生きている間に伝えてしまえばよかった。私はアリアのことを大切な家族だと思っていると伝えるべきだった」

 それは、身分を剝奪した私が願うのはおかしいものだと分かっている。

 アリアの境遇を笑ったのならば、そのような願いを抱くのは間違いだろう。
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