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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる

07-7.

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 鬼としての力は弱い。

 それでも、人を払い退けることはできる。

 その気になれば村の一つくらい滅ぼすことができるかもしれない。

「いいえ。一度もありませんわね」

「そうだろう。では、その姿を見せてくれ」

「それはできませぬ。貴方様の前には見せられませぬ」

 弥生の答えは変わらない。

「さようか」

 旭は尾を揺らした。

 これ以上の問答は意味がないと判断したのだろう。

(僕にできることをするしかない)

 春博は弱い。

 それをわかっているからこそ、覚悟を決めた。

 妖力や呪術の戦いが繰り広げられてしまえば、春博にはなにもできない。

 自分自身を守ることすら難しいだろう。

 なぜ、それほどに力を使い熟せないのかさえもわからない。

(いざとなれば、この身を捨ててでも)

 その眼には強い意思が宿る。

 旭の為にならば何でもすると覚悟を決め、力強く刀を握り締めた。

 その力強さを拒絶すかのように刀は小さな音を立てたが、春博の耳には届かない。

(旭様を守り抜けばいい)

 胸に秘めた強い意思は時として妖力に変化を遂げる。

 精神力を高めれば自然と気力が高まると言われているのと同様の原理なのだろう。

(ついでに小娘も守ってやればいい)

 感情により左右されることが多いのは、なにも人間だけではない。

 あやかしや荒魂、神々であったとても、自然の摂理から外れていない限りは同じである。

 それを知っているのだろう。

 力強い意思と共に自身の妖力が高まり、身体の中が燃えるように熱くなっていることを感じとっていた。
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